第20話 これは拾うという表現でいいのか?・前

 とある村、名前はあるがどうでもいい。

 というわけで出発することにしたが、ここでアルナが声をかけてきた。


「ショータさん、次拾うものはどんなのがいいです?」


「そうだなぁ、魔法が使えるようになるものとか、怪我が怖いから防具関係もいいな」


 物理的な攻撃力、それに関しては今のところこれ以上のものは望んでないしな。

 エロいお姉ちゃんが出たら、選ぶ自信があるから出ないでもらいたい。


「ねえねえ、ショータンは卵といっても、ドラゴンの幼体ごと殺っちゃったんだから、収集値ってやつも増えてるんじゃないの?」


「そういやそうだな。確かめるか」



【収集値】

 100pt(現在のMAX値です)



「MAXになってるぞ!」


「やっぱり、ドラゴンはスゴいんですね!」


「じゃあ何が拾えるのか見ようよ! 何か玩具出っないかなっ! 出っないかなっ!」


 なぜか俺以上に楽しみにしてるんだが、何の玩具期待してんだ?

 まあ聞くまでもないが……アルナの前で拾えねえよ?

 間違って選択しても捨てるから!



【本日の一覧】

 電撃の書―――――――――消費収集値 50pt

 風の書――――――――――消費収集値 50pt

 名のある鎧(国家級)―――消費収集値 15pt

 ダメージ無効―――――――消費収集値  1pt



 何か出てるが……鎧以外よくわかんねえな。


「アルナ、リューシャ、この電撃と風の書って本か?」


 スキルブックを二人に見せると、リューシャは楽しそうにし、アルナは口を開けて暫し放心している。


「ショータさん、この電撃と風の書は魔法が使えるようになると言われている、賢者が書き残した書物のことですよっ! 現存するものなんて、王宮の倉庫に眠ってる分くらいだと思います」


「おおおっ! とうとう俺も魔法が使えるようになるのか! ちなみに、この鎧ってどのくらい使い物になるんだ?」


「国家級なら強度は申し分はないですけど、筋力かそれを補うスキルがないと動けないですね」


 アルナがいてよかったぜ。

 鎧は拾っても使えねえってことだな。

 防御が甘いのは困るが、まあしゃあないってことで。


「ショータン、ここはダメージ無効を選ぶんだよね?」


「これ? 意味わからないから選ばないぞ」


「え~~っ! ダメージ無効だよ? 防具もいらなくなるんだよ? スゴくお得でしょっ!」


 確かにダメージを気にしないでいいなら、これからの狩りが劇的に楽になる。楽になるが、わけわかんねえんだもんなぁ。


「これ魔法の書じゃないんだろ? アルナはわかるか?」


 首を力なく左右に振るアルナ。


「お力になれなくて、すみません。おそらく『書』と書いてない時点で魔法の書じゃないでしょうし、そもそもそんなダメージ無効なんて現象自体知りません」


「リューシャ、ということでダメージ無効はなしだ」


「だって、1ptだよ? ダメージ無効だよ? スキルブックに嘘なんて出ないよね?」


「お前は誰の差し金で、俺にそれを選択させようとしてんだ?」


 強く言ったつもりはないが、リューシャは後ろを向くとしゃがみこみ、完全にいじけモードに入った。

 俺が悪いのか? 絶対悪くねーぞ。


「ショータンに怪我してほしくないしさ……いつも元気なショータンでいてほしいしさ……これからランクが上がったら、危険がいっぱいなんだよ……」


「言ってることは理解できるけどさ、1ptだし、逆に怪しくないか?」


「自分のスキルだよ? おかしなことは起きないはずだよっ!」


 いや、前科があってだな、セクシーなお姉さんがマッチョなお兄さんになって出てきたこともあってだな、ってお前のことだよ。


「ショータさん……」


「もうわかったよ、アルナもリューシャの言ってることがわかるって言いたいんだろ」


 爽やかな笑顔を向けるアルナ。

 俺って意志が弱いんだろうか……二人がかりで来られると流されるよなぁ。

 つうわけで、ダメージ無効をポチッとな……。


 押して暫く待ったが、何も起こらない。

 ほっぺたをつねってみたが、普通に痛いためダメージは通ってる。


「ダメージ無効といっても、与えるダメージが無効になるって可能性もあるよなぁ。選択間違ってなけりゃいいけど」


 その場合、俺の神剣がナマクラになったりしねえかな……。



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