第12話 伝説の剣・前

 収集値を溜めることだけを念頭に狩りまくった結果、金だけはすぐに貯まったが、収集値をMAXにするために三日を要した。

 上位種を狩るためには遠出が必要、遠出するためには基礎戦闘力向上が必須だが、今の俺にはそれができないからだ。


「やっとMAXになったぜ。次からは、俺が強くなるものしか拾わないからな」



【本日の一覧】

 伝説の剣(神話級)――――――――消費収集値 100pt

 伝説の剣(精霊級)――――――――消費収集値  80pt

 名刀  (国家級)――――――――消費収集値  25pt



 出たぞぉぉぉおおおッッッ!!

 出たけど、これは……。


「スゴいのが出ましたね。神話級なんて人が扱えるのでしょうか?」


「ショータンの思いが伝わったんだね! お祝いにキスしてあげるっ!」


 まずは都合よく解釈し、抱きついてくるリューシャを突き放す。

 その間も、アルナの言葉が気になって仕方がない。


「人が使えない武器なんてあるのか?」


「ありますよ。神話級や精霊級の武器は、主人を選ぶと言われています。上位になればなるほど、その条件は厳しくなるらしいですよ」


「それじゃあ、神話級なんて扱える奴はいないだろ……」


「そうですね、ここ数百年、そんな武器を扱ったという人物は聞いたことがありません。というか、そういう武器があるのかわからないレベルですね」


 これは難しい選択になりそうだな……無駄にpt使ったら、この先の人生に影響がでちまう。

 悩んでいると、俺の背中に乗っかってくるリューシャ。

 こいつはいくら突き放してもへこたれないな。


「ショータンはなんで悩んでるの? こんなの神話級しか選びようがないでしょ。扱えなくても高値で売れるだろうし!」


「そうだな! 売ればいいんだよ! リューシャもたまには役に立つじゃないか。よし、伝説の剣(神話級)をポチッとな!」


【本日の一覧】から選択肢が消え、無事、選択が完了したことがわかる。


「あっ……もう選択しちゃったんですか?」


 俺が神話級を選択したあとに、小さく声をあげたアルナ。

 その表情はとても不安そうで、俺の選択が早計だったといわんばかりだ。


「聞きたくないけど、一応聞いておこうか……」


「神話級の剣なんて、高級すぎて買い取れる店はないですよ。国も買い取るかわかりませんし。大体、そういう剣は何かしら問題もあるんです」


「問題?」


「聞いたことがある歴史上の神話級の神剣は、封印の鞘がないと常に刀身が燃えて扱えないとか、主人以外の者が手にすると、幻覚に悩まされるとか」


 それって呪われてんじゃね?

 この神話級って、魔剣とかも含まれてんのか!

 でも待てよ、拾ったら所有権が俺になるのなら、俺が主人になるんじゃ? 所有権だけ俺で、剣に認められるかは別とか?

 そんなことを考えていると、俺の背後に立つリューシャが唸りだす。


「リューシャ、さっきから何してるんだ?」


 しきりに頭上ばかり気にしているリューシャ。


「私みたいにぃ、空から降ってくるのかなぁって、ちょっと気になったんだよねぇ」


「怖いこと言うなよ、剣なんて降ってきたら死んじまうわ!」


 こればかりは、道に転がっていることを心から願う。


「よし、今から探しに行くぞ」



       ◆  ◇  ◆



 伝説の剣が落ちていた場合、他の者に拾われる可能性はないのか?

 答えはノーだ。

 俺のスキルは間違いなく、俺が拾うことになっている。

 そして、今回の伝説の剣も俺が拾うこと前提で、舞台が整えられていたようだ。


「ねえねえショータン、あの人だかりなんだろ?」


「嫌な予感がするんだが、行ってみるか」


「衛兵もいるみたいですから、気をつけてくださいね」


 人混みをかき分け騒動の中心が見える場所まで出ると、そこには十数人の衛兵が地面に刺さった一本の剣を囲んでいた。


「誰だ、こんな場所に剣を刺していったのは。全く抜けんではないか」


「んぉおおおおおッッ!! 抜けん! この俺でも抜けないとは、いったいどうなってやがんだ!」


 一番大柄の衛兵が力いっぱい引き抜こうとしているが、剣はビクともしない。

 見えている部分は装飾がかなり凝っており、ただの安物の剣じゃないのは丸わかりだ。


「ショータさん、あの剣てもしかして、ショータさんが拾うべき剣なのでは……」


「そうだろうな。いかにもって感じの見た目だし」


 すると、衛兵の下に近づいてゆくリューシャ。


「衛兵さん、その剣が抜ける人ならいるよぉ」


 振り向いた衛兵は、すぐさま鼻の下を伸ばす。

 リューシャの容姿はかなりエロいからな。

 衛兵だけじゃなく、集まっている野次馬連中も同じように鼻の下を伸ばしているのがわかる。


「この剣が抜ける者がいるだと? この俺でも抜けなかったものが、早々抜けるわけがないだろ」


「抜けるってば。勇者もいるんだよ?」


「なんだと!」


 リューシャが俺を指差すと、すぐさま近づいてくるデカい衛兵。

 迫力はヘビー級ボクサーのようで、そのあまりの圧迫感を前に、反射的にアルナを前に立たせちまった!


「少女を盾にするとは、なんと貧弱な輩だ」


「な、何言ってんだ、勇者はこのアルナだっつうの!」


 困惑する衛兵と、アルナ。


「ショータさん、わたしが行っても……」


「俺が一緒に付いていくから、まず、勇者のアルナでも抜けないところを見せたほうが効果的だろ?」


 何が効果的か自分でもわからん。

 スゴさアピール? とにかく俺自身は弱いし、あの衛兵を前にすると足がすくむんだよ!


「わかりました。プロイラードの勇者として、挑戦してみます!」


 アルナから出た、プロイラードというワードに反応する衛兵たち。

 明らかに動揺してるのがわかるぞ!



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