第11話 耐性の原因
今日もゴブリン狩りから始め、既に50匹は狩った。だが、収集値が1ptしか回復していないことに気づいた。
「おかしいぞ、明らかにおかしい。この調子じゃゴブリンだけじゃない、オークを狩ってても、すぐに回復しなくなるんじゃないのか」
ゴブリンの耳を削ぎ落としているアルナが心配そうな顔を向けると、リューシャが木陰に座りながら楽しそうにそれを見ている。
「お前も働けよ。耳を切り取るくらいできるだろ」
「だってぇ、ナイフも何もないのにできないよ? あれば手伝うのになぁ」
確かにないが、あれば本当に手伝うんだろうな?
錆びたナイフでもあればよかったか。今度買わないとダメだな。
「ショータさん、耐性がついたと思ってたんですけど、実は違う原因があるんじゃないでしょうか?」
「違う原因?」
「はい、もっとはっきりとした原因があると思うんです」
原因……最初からゴブリン10匹というのも、実はおかしかったのかもしれない。
それから考えると、一日経つごとに難易度が上がる? それなら、普通は一定の間隔で上がって然るべきだが、実際はそうじゃない。
違うことといえば、スキルを使っていることくらいか? もしくは、主従の印を結んだ仲間が増えてることだ。
「考えられるのは、スキルを使ったこと、仲間が増えたこと、この二つしかないぞ」
「そうだとしたら、安易に仲間を増やさないほうがいいかもしれませんね」
俺とアルナの目がリューシャへと向く。
「それなら、リューシャの主従の印を解除すればわかるな」
「絶対ヤダからね! 解除すれば絶対結んでくれないでしょ!」
「そりゃあな。結ぶ必要ねえし」
アルナの小さい体に泣きつくリューシャ。
なかなかわかってるじゃないか。アルナは見捨てることができないからな。
「ショータさん、それなら私が解除して試しましょうか?」
は? それは俺が困るんですが?
結ぶの断られたら俺の人生終わるからな。
顔を振って拒否すると、なんだかホッとした様子を見せるアルナ。
「そもそも、主従の印てどういう効力があるんだ?」
「まず主には基本逆らえませんし、危害を加えることができません。あとは他人が求婚などちょっかいを出してきた時は、主従の印を理由に、主が正式に断れます」
「逆らえないのなら、なんでリューシャの主従の印を解除するって命令は働かないんだ?」
「それはですね、結ぶのと同様、解除するにも二人の同意が必要なのと、ショータさんが本気で言ってないから、ショータさんがとても優しい人だからだと思います!」
アルナの背中から顔を覗かせるリューシャが、期待を込めた瞳を向けてくる。何に期待してるのか知らんが、これ以上発展するものはないぞ。
「主従の印に関することはわかった。スキルの耐性の件も、拾うたびに上位種を狩らないといけないとなると、俺が強くならないとやっていけないってことになる。次は人は選ばないで、戦闘に関するものにするわ」
「ショータン最高っ! これ以上ライバル増えても困るもんね」
「わ、わたしも、増えすぎるのはどうかと思いますね!」
賛成する理由がおかしい気もするが、反対されるよりはマシだな。
「つうわけで、今から狩りに狩りまくって収集値MAXを目指すぞ!」
「おーー!」
「はい!」
元気よく返事をする二人。
若干一名は仕事がないと思ってるようだが、そうは問屋が卸さないぞ。
「じゃあ、今からナイフを買いに行くぞ」
「ナイフなんて必要なの?」
怪訝な顔を向けるリューシャ。
本当に何もわかってないって感じだ。
「そりゃリューシャが耳削ぎ落とし係になるからな。アルナが半殺しで俺の前に持ってくる係で、俺がトドメを刺す係。わかったか?」
「えーーーっ!! 働いたらわたし死んじゃうよぉ!」
「じゃあいっぺん死んでみようか? 働かざる者食うべからずだ。これはアルナも賛成だよな?」
「え、まあ、リューシャさんは大人ですし、働いてほしいですね……あ、勘違いしないでくださいね、働かなくても、わたしは死んでほしいなんて思ってないですから!」
不貞腐れるリューシャは転がっているゴブリンの前に
「ちょ、お前、ナイフがなくても切り取れるんじゃねえかよ」
「今覚醒したんだもんねー。さっきまでは無理だったの! ショータン死ね死ねってヒドいんだもん」
「お前が死ぬって言うからだろうが。俺は死んでほしくないぞ。しっかり働いてほしいだけだ」
「難しい注文だよね~、ショータンのお願いでも働きたくないよね~、死んじゃうよ~」
どこまで働きたくねえんだよ!
リューシャにとっては、下関係と対局に位置するのが仕事のようだな。
やる気が180°違うわ。
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