第7話 「ヤらないか?」

「どうかされましたか?」


「いや、なんでもない」


 レナが訝しげに尋ねてきたが、こいつに中身を知られるわけにはいかない。ただの乞食と思わせておくほうが幾分マシだ。

 万一、アルナをこのスキルで拾ったなんてバレたら、何を言われるか想像すらできないわ。


「とりあえず金と、アルナが一目で仲間だってわかる方法はないか?」


「そうですね、とりあえず今回は細かいのが足りないので、報酬は端数はおまけしまして、2万ガルです」


「今回は高いんだな」


「オークが45匹いましたから。オークは1匹150ガルになります」


 結構な金額だ。昨日の3000ガルと比べたら七倍近い。

 やはりゴブリンじゃダメってことだな。

 ちなみに、俺一人じゃオークは絶対倒せない……アルナ、マジ天使!


「それとパーティー仲間の証明ですが、これを目立つ所に着けておけば大丈夫でしょう。ギルド公認パーティーを証明する徽章バッジです」


 レナが手渡してきたのは白い徽章だ。


「それにアルナさんが魔力を込めれば、独自の色に変わるでしょう」


 徽章をアルナに渡すと、握って何かを念じるようなポーズを取る。次に手のひらを開けた時には、さっきまで白色だったものが、燃える炎のような色鮮やかなものになっていた。


「これでパーティーですね!」


「冒険者らしくなってきたな」


 お互い目立つように襟元に着ける。

 アルナが嬉しそうなのは、パーティーから追放され、再びパーティーが組めたことによるものだろう。


「勇者のアルナさんがいれば、討伐用の依頼を受けることもできますけど、正直オススメはしません。あくまで、ショータさんでしたっけ? あなたの実力に合ったものだけですからね」


「それはわかったけど、なんで俺の名前が疑問系なんだよ」


「さっきアルナさんが言っていたのを聞いただけで、確信がないので」


「ストーカーのくせに、そこは自信持っていけよ。つうか最初に確認しとけよ」


「そこまで興味が……」


 殴ってやりたくなるんだが?

 まあ今に見てろよ。拾いまくって一目置かれる存在になって見返してやる!



 冒険者ギルドを出て宿までやってくると、アルナに先に部屋に戻っておくように言いつけ、俺は町へ繰り出した。

 そう、今から拾わないといけないからだ!



【本日の一覧】

 マッチョなお兄さん―――――――消費収集値 10pt

 セクシーなお姉さん―――――――消費収集値 40pt

 夢魔――――――――――――――消費収集値 75pt



 まず、マッチョなお兄さんはいらん!

 戦力的なものならアルナで足りているし、なにより今、男が必要かと訊かれたらいらん!


 次に夢魔、これは非常に気になるが、消費収集値が75ptってのは痛い。そもそもこの世界には魔王がいるようだし、これは敵で間違いないはずだ。何が起こるかわからない以上、安易に手を付けていいものじゃない。

 というわけで、消去法でセクシーなお姉さんだ。あくまで消去法だ。


 あー、俺はセクシーなお姉さんじゃなくてもいいんだけどなぁ、仕方ねえよなぁ、これしか残ってねえんだもんなぁ。

 今日は選ばなくてもいいとかいうのはナシだ!ってなわけでポチッとな!


「まずは裏路地だ! 何はともあれ裏路地だ!」


 誰もいない裏路地を探し彷徨っていると、丁度誰もいない路地に出た。

 しかし、どの筋を見ても誰も倒れていない。


「どうなってんだ……もっと探せってこと――――がはぁッッあアア!!」


 頭に凄い衝撃を受けると、地面に顔を強打するハメになった。

 どうやら上から人が降ってきたようだ。


「痛たたっ……おおこれはいい男じゃないか」


 顔を上げると、そこには凄いぴっちりした服を着た、マッチョなお兄さんが立っている。

 ここで脳がフル回転した。

 俺は押し間違えたのか? いや、そんなはずはない。

 嬉々としてセクシーなお姉さんを押したはずだ!

 いや、これも間違いであって、しゃあなしで押したはずだ!


 ――――いや待てよ、そもそもこれが俺の【拾う】によるものなのかもわからないじゃねえか。まずは左手の主従の印てのを――――――――あったよ!




「ヤらないか?」



 あれ? 耳がおかしくなったのか?

 今、このマッチョなお兄さんから聞いちゃいけないフレーズを聞いた気がしたぞ。


「ヤらないか?」


「また言いやがったな! やらねえよッ!」


 起き上がると、すぐさまお兄さんから距離を取る。

 こりゃ力勝負になったら間違いなく負ける!


「俺はお前とは主従関係になるつもりはない! 今すぐその左手の印を消せ!」


「あれ、ホントだ。主従の印が刻まれてる。これは好都合だな」


 何が好都合なんだよ! やべえ、このままじゃ襲われる……。

 正確には、「俺の初めてが奪われる」だな!


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