第6話 誘拐犯だと疑われております

 なんとか冒険者ギルドにたどり着くと、昨日よりも空いており、並ぶ必要はない。

 ガラガラの受付窓口に行くと、受付嬢が俺の顔を見た途端、例の受付嬢、レナへと交代した。


「レナは俺の専属なのか?」


「はぁ……通報しますよ?」


「何をだよ! お前、俺の話聞いてるか?」


「あなたこそ、私の言ったことを聞いていましたか? 通報しますよ」


 レナの目は、俺の後ろに控えているアルナへと向けられている。


「少女誘拐ですね」


「違うから、仲間だよ! 冒険者仲間!」


「騙したものを仲間とは言いませんよ」


「騙してねえよ! アルナからも何か言ってやってくれ!」


 アルナを前に出し、俺は後ろへと下がる。

 助言をしたら、誘導尋問扱いされそうな勢いだ。


「お名前は?」


「アルナ・ファースです。ショータさんに助けられて、今は主従の印を結んでいます」


「主従の印? 騙されたのではないですか?」


「いえ、そんなことはないですよ」


 アルナの目が細められ、アルナから俺へと向けられる。


「アルナさん、主従の印は弱みを握られたとか脅迫されたとかではなく、自分の意思で結んだと断言できますか?」


「あ、いえ、結んだのは知らない間ですけど――」


「ほらほら! 誘拐じゃないですか!」


「勝手に決めつけんなよ! 最後まで話を聞けって!」


 アルナが涙目になりながら、視線を俺とレナの間を行ったり来たりさせている。


「わたしだけじゃなくて、ショータさんも知らない間に結ばれてたみたいだし……」


「本当ですか? そんなの聞いたこともないんですけど」


「本当なんだからしゃあねえだろうが」


 レナは不審な目を向けながらも、右手を差し出し、俺の抱えている麻袋をよこすようジェスチャーしてくる。

 それを渡すと、昨日とは違いすぎる袋の重さに、目を見開いて俺の顔を凝視してきた。


「なんですか、この量は!」


「アルナがいたらサクサク狩れるんだよ」


「こんな小さな子一人が加入しただけで、そこまで劇的に変わるわけがないでしょう」


 すると、アルナが小さく手を挙げた。


「す、すみません、これでも勇者なんです」


 アルナの勇者発言に、首を傾け、怪訝な目を向けるレナ。

 メチャクチャ優秀なんだぞ。本国じゃポンコツ認定食らったらしいけど!


「勇者とは、どこの勇者ですか?」


「プロイラード王国です。魔王討伐失敗で追放されちゃいましたけど。調べてもらえばわかると思います」


 恥ずかしそうに答えるアルナ。

 別にそこは恥ずかしがることじゃねえぞ! 魔王討伐なんて一番最後にするもんだ。討伐できなくてもいいんだよ!


「プロイラードといえば辺境ですが、実力はトップレベルの国ですよ。そこの勇者ということは、勇者養成機関をその歳で主席で卒業したということになりますが」


「あ、はい、主席で卒業しちゃいました。えへへっ」


 よくわからんが、とても大事なことを話し合ってる気がするぞ。

 この世界の勇者ってのは、機関卒業で決まるのか。てっきり生まれつき決まってるもんだと思ってたが。つうか主席って才能も努力も完璧じゃねえか。


「アルナさん、あなたが勇者というのはわかりましたが、ご自分の状況を理解できていますか? この人は異界人、それもゴミ漁りなんですよ」


「……ゴミ漁り……」


「おい、デタラメ教えるな! アルナも真に受けるんじゃねえよ!」


 すぐさまスキルブックを開き、俺のスキルをアルナに見せる。

 このままだと、本当のゴミ漁りにされかねない。ったく、二度と言うなって言ったのに、全く守るつもりがないらしい。


「スキルが【拾う】ですか、これを使うために魔物を狩る必要があるんですね!」


「そうだ、拾うと言っても、本当にただ落ちてるものを拾うわけじゃないからな。出会う確率が確実になるって意味だ」


「ショータさん、スキルの説明にある、【本日の一覧】というところに、何か出てますけど」


「何ッッ!!」


 すぐさまスキルブックを取り上げ、アルナの視界から【本日の一覧】を消し去る。


「内容を見たか?」


「いえ、内容までは見てないですけど」


 おかしなものが出てたら困るからな。

 干からびたパンだけでも恥ずかしいレベルだ。

 つうわけで、【本日の一覧】を確認してみると、そこには目を疑うものが並んでいた。



【本日の一覧】

 マッチョなお兄さん―――――――消費収集値 10pt

 セクシーなお姉さん―――――――消費収集値 40pt

 夢魔――――――――――――――消費収集値 75pt



 なんだこれは……アルナに見られなくてよかったぜ。

 干からびたパンどころじゃねえわ。

 現在の収集値はいくらだ…………と、75ptか。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る