第5話 結局、冒険家者稼業かよ!
おかしい……眠れた気がしねえ。
すげえ眠い。子犬だと思ってたはずなのに、なかなか眠れないとはどういうことだ。
「ショータさん、大丈夫ですか? 眠そうですけど……やっぱり狭くて眠れませんでしたか?」
「そうだな、今晩からはツインベッドの部屋にするわ」
申し訳なさそうにしているアルナ。
心配するな、その分しっかり稼いでもらうし、俺の収集値にも貢献してもらうからな。
というわけで、早速アルナを連れ、町周辺にいるゴブリンが見渡せる場所にやってきた。
「ゴブリンですか? わたしはもっと上位の魔物も狩れますけど」
「そんな所に行ったら、俺が死ぬから」
「あっ」
「あっ」言うな!
俺の格好見たらわかるだろうがよ。俺は初心者装備だよ!
さっきからずっと申し訳なさそうにしてるな……全部俺のせいだな!
「とりあえず、実力が見たいから、ここから見えるゴブリン殺ってくれる?」
「わかりました!――――――――終わりました!」
「早すぎるよ! それで、何匹殺ったんだよ」
「ざっと60匹くらいだと思います。少なかったですか?」
アルナはウルウルした瞳で見つめてくる。
泣きたくなるのはこっちなんだけどな!
俺の半日分以上を、一瞬で終わらせるとは……。
だが、この働きのおかげで、俺の収集値が少しでも回復すれば万々歳だ。
【収集値】
9pt(MAXまで91ptです)
はっぁあああああ? 全く回復してねえよ!
「ショータさん、スキルブックなんて開いて、どうしたんですか?」
「いや、ちょっとな」
試しに1匹ゴブリン殺したら10ptになりやがった。
前回99匹だった分から、その分で増えただけかよ。
「俺のスキルはゴブリンを倒さないと意味をなさないんだよ。主従関係のアルナが倒せば変化があるかと思ったが、そう上手くはいかないようだな」
「だったら、わたしがゴブリンを集めて、ショータさんがトドメを刺せばいいんですよ!」
「それもそうだな、だったらお願い――」
「集めてきましたよ、ショータさんっ!」
早えええっ!! 超有能じゃねえか!
ポンコツ呼ばわりした奴に感謝だな。つうか一発殴ってやりたい。
目の前に転がっている大量のゴブリンは、全て瀕死の重傷で動けないようだ。
「いったい何匹いるんだ……」
「36匹ですね」
手を合わせ、目の前のゴブリンを息の根を確実に止めてゆく。
10匹倒したところでスキルブックを確認すると、収集値に変化がない。
「あれ? 数値に変化がないぞ」
「手伝ったのがダメだったのでしょうか?」
「そんなわけないと思うんだが」
そのあと、10匹殺したところで確認してみると数値が1pt増えていた。
わけがわからないため、そのまま一匹ずつ殺しながら確認すると、29匹まではそのままで、30匹目でまた一つ増えた。
「15匹で1pt増えるようになってんじゃねえか……」
「耐性がついたのではないでしょうか? それなら、ついでに捕まえたこのオークで試してみてください。ゴブリンより強い魔物ですよ」
ブサイクな豚顔の魔物にトドメを刺すと、たった一匹にもかかわらず、収集値が1pt増えた。
「……これはあれか、俺も強くなって、より強い魔物を倒していかないとダメってことなのか……これじゃあ冒険者から抜け出せねえじゃねえかよッ!」
スキルブックを地面に叩きつけると、それをアルナが拾い上げ、パンパンと砂を落としてゆく。
「ショータさん、大丈夫ですよ。わたしも協力しますから」
にっこりと微笑むアルナが、小さな天使に見えてきたわ。
どうにかして、もっといいもの拾って、楽ができるようにならねえと。
「まだ出会って一日も経ってないのに悪いな。もう少し強くなるまで付き合ってくれ。情けない話だが、このままだと近いうちに野垂れ死ぬわ」
「大丈夫です、いつまでもいますから。その、なんと言っても主従関係ですからね!」
主従関係があってよかったな……こりゃマジで見捨てられるとヤバイわ。
時間が惜しいため、目の前に転がってるゴブリンから左耳を採取してゆく。
「じゃあとりあえず、ゴブリンでもオークでもなんでも瀕死にして俺の前に持ってきてくれ。トドメを刺して、耳を切り取る係やるから」
集まる魔物をせっせと殺し、耳を剥いでいるとあっという間に夕方になってしまった。それでもざっと昨日の三倍以上は狩れただろう。
それを持って冒険者ギルドへ向かうと、当たり前のことだが、小さいアルナを連れて歩いている俺を、変質者を見るような目が襲う。
「大丈夫ですか、ショータさん?」
「ああ、これはあいつらの勘違いだからな、体調がすぐれないのも、ただ自意識過剰なだけだし」
さっさと冒険者ギルドに入って、アルナがパーティー仲間だって証明してもらわねえと。
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