第2話 加護【拾う】の中身
異界管理事務局から追い出されるように出ると、スキルブックにある【拾う】が実際どんなものか確認することにした。
【拾う】
スキルブックに一日一度更新される一覧から、一日に一度だけ拾うものを選択できる。その際、拾うものによって収集値を消費する。
【収集値】
100pt(現在のMAX値です)
回復するためには……。
【本日の一覧】
10万ガル――――――――消費収集値 10pt
錆びたナイフ―――――――消費収集値 2pt
宝の地図―――――――――消費収集値 1pt
干からびたパン一年分―――消費収集値 14pt
――――なかなか言葉が出てこねえじゃねえか。
何から言えばいいのか……干からびたパンはカラッカラに乾燥してるから日持ちするのか? つうか邪魔で置き場所ねえし、何より不味いだろうな。それよりも落ちてんだろうし、汚くて食えたもんじゃねえな。
錆びたナイフはゴミだし、宝の地図はptから見ても偽物だろう。本物でも俺が手を出せない所で間違いないだろうし、この二つはいらん。
というわけで、ここは堅実に10万ガル一択だな。
そのへんの店を見ても、ガルが金の単位だってのはわかってる。
10万ガルを選択すると、一覧が真っ白になり、それと同時に足元に重そうな麻袋が降ってきた。
空を見上げても、落とし主がいるようには見えない。
「よし、とりあえず金はゲットできたぞ!」
収集値を見ると、100から90に減っている。
ここで残る問題は、どうすれば回復するかだ。
どうして最後まで書いてないんだ? 書けないことなのか?
何にしもて、スキルブックを逐一確認して、何をした時に回復したか確かめるようにしなきゃいけない。
安そうな宿を見つけ、金の勘定をすると、10万ガルだと三十日は大丈夫だということがわかり、翌日に備え早めに寝ることした。
◆ ◇ ◆
翌日、早速スキルブックを確認すると、収集値は全く回復してなかった。
こりゃマジで回復方法を見つけないとヤバいようだ。
というわけで、早朝から町に出て色々なものを食ったり、人助けもしてみたが、回復しやがらねえ。
俺に素でゴミ漁りをやれってのかよ。
「今日の分の一覧は絶対に見ねえぞ。すげえのが100ptとかだったりしたら卒倒もんだしな」
町を散策すると、『職業紹介所』という看板を発見した。
回復方法がわかるまでは、金を稼ぐ方法くらいは見つけておかないと。
「すみませーん」
「仕事にお困りですか? あ、昨日のゴミ漁りさんですね」
「昨日の受付嬢じゃねえか! どうしてここにいるんだよ」
「転職ですよ。有能ですから」
「俺のスキルに対する嫌味かよ! これでも元の世界じゃ……って言ってて虚しくなるわ」
冷静になれ、こんな所でキレても何もメリットはない。
「ここは職業紹介所なんだろ? だったら昨日とは違って仕事回してくれるんだよな?」
「はい、この世界は有能な方も無能な方も等しくできる仕事があります。それは冒険者です!」
「俺に死ねっていうのか?」
「大丈夫ですよ、ゴブリンなんてホント弱いですから、ゴブリンだけ狩ってても生きていけるくらいの稼ぎにはなりますし」
「弱いって言っても魔物だろ。俺はこれでも運動は苦手なんだぞ」
「それなら想像してみてください。ゴブリンは魔物になったあなたです。拾うことしか能のない魔物なんですよ。どうですか、楽勝でしょう?」
「お前、俺をディスってんのか? でも、ゴブリンてホント雑魚なんだな、ちょっと安心したわ」
複雑な心境だが、ホッとしたのも事実だ。
この受付嬢、なかなか説明上手いじゃねえか。
「やる気になってよかったです。私も担当がいつまでもゴミ漁りなのは心配ですから」
「とりあえず二度とゴミ漁り言うな、な?」
「承知しました。それで、冒険者の仕事は冒険者ギルド担当になるんですが、その格好では門前払いでしょう。そこで、この冒険者セットを5万ガルでお譲りしますが、どうしますか?――――ってお金ないですよね。まだゴ――」
「舐めんじゃねえぞ、それくらいあるに決まってんだろ!」
こいつ、またゴミ漁りって言おうとしやがったな。
なんか口車に乗せられたような気がするが、5万ガルで買わされちまった。
「町の周辺はゴブリンしかいません。町から離れなければ比較的安全ですよ。ゴブリンの左耳を集めて冒険者ギルドに行くと報酬が貰えます」
受付嬢の助言もあり、早速ゴブリン狩りに出かけることにした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます