第3話

その男、ソールドアウトの市川は

明日香に一つの提案をした。

「諸見沢さん。みんなが、一般大衆がいちばん

知りたがっているのは、スターのプライベート

なんです」

「プライベート」

「そうです。私生活と言い換えてもいい。いまだかって

自分の私生活をすべてさらけ出した芸能人はいない。

それをやれば」

市川が意味深な中断をした。

「人気は不動のものになる」

「そうです」

市川が明日香に同意した。

「でも、それは」

「そう、ある意味、度胸のいることです」

「ええ」

「つまり最終的にはお尻の穴まで晒すことに

なるかもしれません」

「イヤです、そんなこと」

明日香がソファーから勢いよく立ち上がった。

「すぐにとはいいません。やる気になったら

ご連絡下さい。お力になれると存じます」

そう言い残して、市川は帰って行った。

明日香は棚からブランデーを取り出して、

グラスに注ぎ、一気に飲み干した。



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