第7話 アイン・ホワイトという生き方は難しい

「やあやあ!この僕をお呼びのようだね?アインさん」


 このポーズを決め髪をかきあげながら登場した人物、藤宮奇跡は前に言ったとあるメンバーの護衛も務める帝国の幹部の1人だ、行動から分かるようにいつも自分に酔っているナルシスト女でもあるが重要人物の護衛をしているだけあり実力は帝国内でもトップクラスだ


「藤宮、アンタには今回の戦いに出てもらうことにしたヨ、もちろん拒否権はないカラ」


 そのワタシの言葉に首を傾げながら藤宮は疑問を口に出す


「どうしたんだい急に?今回の侵入者は僕が前線にでなければいけないほど相手……というわけなのかな?」


 その疑問をワタシは否定する


「いや……確かに油断できる相手というわけじゃないケド本来は藤宮が出る必要はなかったヨ」

「と言うと?」


 そう本来は……だ、事実原作のこの戦争では藤宮は出てこない、藤宮が護衛している稲川聖はこの組織の最重要人物でありアインはこの戦争中も藤宮には稲川の護衛を第一に考えろと命令していたからだ、さて、話をもどそう


「いや〜実は昨日小栗含むワタシが選んだ9人の魔法少女が全員病院に運ばれてネ」

「魔法少女9人が病院行きって……一体何があったんだい?」


 ふむ……これは正直に答えていいものか……正直に言ったら帝国メンバーのバカさ加減に愛想つかしたりしない?……うん捏造するか


「えーっと実は今月ワタシの誕生日なんだケド」

「ほう?おめでとうございます」

「そのサプライズとして筈木と夜桜が合作で巨大なクラッカーを作ったんダヨ9人分」

「……」

「で、その巨大クラッカー……火薬の量を間違えたらしくてさ暴発、ワタシ以外の9人は重症で病院行き、今回の戦いに出れないってワケ」

「それはなんとも……」


 藤宮は呆れたような表情をしたが特にそれ以上の反応はなかった


「というわけで戦力が足りないんだよネ〜ワタシが出るのもまだ早いし」

「なるほど……だから僕か……」


 藤宮の強さはあの馬鹿どもの内3人程度なら相手にできるくらいには強力だ、例え1人でも赤里を除いた4人くらいならどうにかなるだろう


「僕としてはそれ自体に問題はないけど……聖の護衛はどうするんだい?彼女が流れ弾にでも当たって死んだらこの組織的にもかなりの大損害だと思うんだけど?」


 そうなんだよねー稲川聖が死んだら帝国的に詰む場面もいくつかあるから正直藤宮を護衛から外すのは悪手だし、ほかのモブでは護衛としては力不足だ、なら護衛として配置できる魔法少女は一人しかいない


「稲川の護衛はワタシがやるヨ……」

「アインさん直々に?」


 興味深そうに少し驚く藤宮だが他に護衛につけられるようなメンバーもいないのはわかってるみたいだからかそれ以上の反応は無い


「ワタシしか配置できる魔法少女が居ないからネ、だけどワタシもずっとは護衛は難しいカラ藤宮はある程度戦ったら退却を許すヨ」


 ワタシは赤里や白崎と戦わないといけないからずっと護衛は難しいしだからといって護衛をつけないのも弱い護衛を付けるのもダメだ、ならどうするか?前線に送った藤宮がやられる前に回収しまた護衛につける、私が今考えられる策はこれしかない


 ワタシのある程度戦ったら退却していいという発言に藤宮も流石に眉をひそめる


「らしくないな〜アインさん、貴女なら殲滅してこいくらいは言うかと思ったんだが……」


 流石に疑うか……


「アンタには言ってなかったけどあのチームには元大罪の七人衆の赤里がいるんダヨ、赤里の相手もアンタが引き受けてくれるワケ?」


 その問いに流石の藤宮も苦笑いをする


「なるほど……そういう事か……それならアインさんの命令も納得だ」


 納得して頷く藤宮だがここまで言ってワタシはあることに気づく、それは他メンバーと藤宮との対応の差だ、加藤達には敵前逃亡したら殺すと言って藤宮には退却を命令、そして加藤達には赤里とも戦わせようとして藤宮には戦わせようてしない


 全員を平等に見下し贔屓しない、それがアイン・ホワイトでありそれは例えどんな状況でも変えないスタンスを貫く、それがある意味アインの強さでもある


 しかしワタシは非常事態だからと言ってそのスタンスを捨ててしまった……これはアイン・ホワイトとして致命的な失敗とも言える


 この事実に気づかれたら本格的に私がアインじゃないとバレるかもしれない……そこまで気づいたが今更どうしようも出来ない、変に弁解でもしたなら余計怪しまれるだろうしね


「そういう事、というわけで話は終わりダヨ」


 やっぱりダメだな……どう似せようとしてもボロが出る


「わかったよ、アインさんの期待に答えられるように頑張らさせていただくね?」

「まあ、期待しといてやるヨ」


 ああ、まただ……アインは人に期待を持つようなことはしない、例え口だけでもそんなことは言わないはずだ……


「では失礼したよアインさん」


 そう言って藤宮は部屋を後にした


「……」


 ワタシは緊張の糸が切れたように息を吐き椅子にもたれ掛かる、今のままじゃダメだ……このままだと冗談抜きでいつかバレるな……


 それ以上に私がアインの尊厳をぶち壊している気がしてそれが一番腹立たしかった


『単純にアイン・ホワイトを知らなかった……ただそれだけです』


 確かにそうだ、私はアイン・ホワイトを知らなかった、いや知ってる気になっていたとも言える


『キャラは書いているうちに作者の予想もしない動きをする』


 これは誰の言葉だっただろう、そう考えると創作キャラには命が宿っている……なんてことがあっても不思議では無い


 ワタシはアインの生みの親だ、しかしだからと言ってアインの全てを知っている訳では無い、親が子のことを全て理解はできないように……だ


 この感覚は創作している人なら分かるかもしれない、特に愛着のあるキャラがいる人なら特に


 そしてワタシが……私が今までを振り返りわかったことはただ1つ


 やっぱり私はアイン・ホワイトに向いてない

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