第4話 燃えるゴミは月・水・金

「えー今回はワタシの集合を聞いて集まってくれてありがとうネ?」

「いや……だって無視したら殺されるし……」

「私だって死にたくないし」


 流石アインさん信頼が厚いぜ☆


「コホンッまあ、本題に入るんだケド、ここにいるメンバー9人にペアを作って欲しいワケ」


「ペア……ですか?」


 スケッチブックを持った少女、椎名美由紀(しいなみゆき)が首を傾げる


「そ、理由は分かるよネ?」

「はい!敵対者との戦争のためですよね!」


 アイドル少女こと斉川柚波が元気に答える


「正解、と言っても本来ならその必要はないんだケドちょっとばかしあのチームにはイレギュラーがいてネ?」

「イレギュラー?って誰なの?」


 帝国のロリ枠、幸原穏香(ゆきはらしずか)が質問してくる


「イレギュラーは赤里作楽……元大罪の七人衆の1人ダネ」

「「「!?」」」


 大罪の七人衆

 それは今から約3年前、突如として現れ2年前に解散した魔法少女インフェルノ内で歴代最強の伝説のチームだ


 そのメンバーはそれぞれ七つの大罪を表した魔法を操り、一人でもえげつないほど強く人の話を聞かない、自己中で性格が捻じ曲がっているという特徴があり、関わってもろくな事がないことで知られる


 そのことから魔法少女インフェルノ内では、見たら一目散に逃げろという共通のルールができるほどだ


 赤里作楽はその中で『憤怒』の魔法を操る魔法少女で大罪の七人衆の火力担当……いや火力バカだ


 使う魔法は『獄炎』と『憤怒の鼓動』の2種類で獄炎は火炎を放出、操作する能力だ……まあ、ぶっちゃけこれはどうでもいい、いや良くないがワタシが相手する分には問題ない、問題はもうひとつの魔法『憤怒の鼓動』だ


 これは周囲の闘争心を引き上げ全員赤里作楽みたいにしてしまうのだ!


 ……どういうこと?と思うかもしれないが簡単に言えばバフとかを使えなくしたり細かいことを考えられなくなったりするんだ


 これの何が怖いかって頭脳キャラはまず腐るしサポートキャラも使えない、単純に火力が高くて攻撃範囲が広い方が勝つという火力バカな赤里作楽の独壇場が完成するんだよね〜


 そんな赤里作楽1人でもえげつなく強いのにそれレベルがあと6人いたのが全盛期の大罪の七人衆だ


「赤里って……なんでそんな奴が無名チームにいるのよ!?」


 緑髪の少女、加藤早苗はかなりビビっているので


「叫ぶなうっさいヨ、そんなことワタシが知るわけないじゃん喧嘩売ってんの?(静かにしたら?そんなの知らないケド今は落ち着きなヨ)」


「ひっ……売ってないわ……です……はい……」

「…………()」


 え?この体変換機能あるの?いや……確かに理不尽にキレたりイラついたりする方がアインらしいけど……


「まあいいや、赤里のやつはワタシが殺るつもりだケド運悪く遭遇した時にはアンタらにも戦ってもらう、その時に少しでもアンタらの生存率を上げるために最低でも2人以上での行動を義務付けるってワケ。アンタらザコ共の命を配慮した素晴らしい提案でしょ?」

「え?わ、私達も『憤怒』のやつと戦えと!?」


 かなり表情が引きつった表情の加藤が案の定戦いたくないと口外に言ってくるので


「あ?敵前逃亡したらワタシが殺すヨ?」


 私はアインらしくその意志を捻り潰す


「わ、わかったから……『憤怒』でもなんでも相手するからそんな怖いこと言わないでよ……」


 加藤は少し泣きそうになりながらそう呟く


 その光景を見た他の8人は引きつったり苦笑いしたりしていた


 済まない……これもアインのキャラを守るためなんだ、少しでも優しさ見せたら誰か勘づいたりしそうだし


「まあいいや、話は戻るケドペア、出来れば相性良い奴と組んでネ」

「せんせー!人が1人足りませーん!」

「誰が先生ダヨ……ああー余ったやつはワタシと組ませるから問題ないヨ」

「「「…………」」」


 それを聞いた9人全員の表情が固まる


 そして一番最初に動き出したのは小栗だった


「私は元々夜桜さんと組んでいたので今回も続行で」

「わっ!?私は大丈夫ですよ?」


 小栗が夜桜を引き寄せ夜桜も承諾する


「ええ!?ずるい!私も香と組みたい!」

「わがまま言うのは結構ですが駄々こねている間に取り残されますよ?」

「うう〜じゃあ柚波、私と組もう!」

「ええ〜穏香ちゃん性格悪いし……」

「今はそれ関係なくない!?」

「は、筈木さん良ければ組みませんか?」

「ん〜?美由紀くんか、わたしで良ければいいともさ」

「陽菜〜!お願い私と組んで!!!」

「どきなさい早苗、貴女じゃあたしの足でまといよ」

「そんなこと言わないでよー!?確かに地味だけど弱くは無いし!」

「えーっと斉川さん私t「アンタら行動早いネ〜何?そんなにワタシと組むの嫌だったのカナ?」」


 私はできるだけ怖がらせないようにフレンドリーな笑顔で質問するがまあ、案の定その場が固まる


 数秒間の沈黙の後に幸原が気まずそうに口を開く


「えーっと私じゃあアインさんのパートナーは役不足かな〜と思いまして〜」

「そんなことないヨ?アンタだってなかなかいい魔法使えるじゃん?」

「いやいやいやそんなことないですよ!?私の魔法なんてアインさんやこの場のメンバーに比べたらカスですよカス!」

「そう?だったらこの中で1番強いワタシと組んだほうが良くない?」

「訂正、早苗よりはましですが」

「私を生贄に捧げようとしないでくれる!?というか喧嘩売ってる?前から言ってるけど私の魔法は地味なだけで弱いわけじゃないからね!?」

「幸原」

「はい!」


 私は幸原の顔に顔を近づけ目を逸らさせないように手で固定する


「ワタシと組むのイヤ?」

「そんなわk「嘘ついたら首へし折るヨ」はい、嫌ですねすごく」


 幸原は無駄にいいキメ顔で肯定した


「ふーん?理由を聞いても?あっ、もちろん他の奴らも聞かせてヨ、でも内容によっては五体満足で居られると思うなヨ?」


 話を聞かせて?(強制)からの気に入らない内容だったら暴力振るうよ?という理不尽な内容に言った自分ですらかなり引いたからきっと聞いているメンバーの戦慄度はかなりのものだろう


「……すみませんでした!」

「「「!?」」」


 突然帝国メンバーの1人金野陽菜(かなのひな)が土下座をしながら謝ってきた


「えっと……何?」

「はっきり言うと……大体の帝国メンバーはアインさんのこと良くは思ってないわ……」


 仲間からの突然の裏切りに目を見開く帝国メンバーしかしそんなこと無視しながら金野は暴露を続ける


「理由として理不尽にキレるし部下を道具くらいにしか思ってない、周りを見下してるし絡み方もウザイ、多少強いからって調子乗ってるしギャンブル中毒者だし部下を簡単に切り捨てるゲスな女帝気取り──って主に早苗のやつが言ってたわ」


「はぁぁぁぁぁぁ!?!?」


 突然の味方からの追い打ちのデットボールに驚愕を隠せないメンバーと当の加藤


「ちょっ待って違うんですアインさん私そんなこと一言も言っt「確かに早苗の言ったようなことを思っているメンバーもいると思います……しかしアインさんは悪くありません!全てそいつらの心の弱さが悪いのよ」陽菜ァァァ!!!てめぇ弁解させろぉぉぉぉ

 !!!!!」


 そんな加藤を無視してワタシに訴えかける金野


「でも信じて!わたしはアインさんに純粋な忠誠を誓っているわ!今まで1度もアインさんを悪く思ったことは無いし貴女の為なら命をかけて戦うそれだけの覚悟もあるの、でもアインさんへの忠誠心を見せれないまま散るのはよく思ってないわ、だから──あたしだけは助けて?」


 こいつ……仲間を売って自分だけ助かろうとしてる!?


 その事実に気づいた他メンバーの内何人かは金野に向かって殺気を漏らしている、あの……金野、アンタワタシが許したとしても仲間から殺されるんじゃない?


「あーうん……まあ、情報提供感謝するヨ」

「あの〜アインさん?先程の陽菜の情報には少しばかりと言いますか訂正したいことがありましt「さて、加藤の処刑の話は後にして」あはは……ですよねー」


 オワタ\(^o^)/とばかりに天を仰ぐ加藤


「まあ、アンタらがワタシをよく思ってないのはよくわかったヨ、でもワタシと行動した方がまだ生き残れるって考えないのカナ?」


 不思議なことはそれだ、アイン自体好かれる要素はあまりないから何となく嫌われている可能性も考えてはいた……いやわかるよ?完全に理不尽なパワハラ上司だし自己中でマイルドにはなるけど物語では改心なんてしない根っからのゲスだし……しかし実力は物語中トップクラスであるのは確かだ、そばにいた方が生存率も上がるとは思うんだけど……


「だってアインさんピンチになったら絶対ペアを切り捨てたり盾にしたりするじゃん」

「ああーなるほど、そういうことネ〜」


 その幸原の言葉に全員頷くあたりその辺への信頼は厚いのだろう流石アインさんマジパネェっす


「まあ、自分のことだからわかるヨ?うん、少しでも手こずったらペア相手に当たったりすると思うし」


「正直!?というか少し手こずるだけで!?」


 ワタシの予想斜め上の回答に驚愕する斉川


 それに今回の相手は『憤怒』だしみんなの気持ちもわかる、アインがいかに強くても相手は伝説の魔法少女の1人だ、アインがピンチにならないとも限らない、そんな中アインと組むというのはある意味最高の死亡フラグとも言える、ライオンの檻にノコノコ入ってくる馬鹿はここにはいないだろう


「でもネ?ワタシだって時と場合くらいわきまえるヨ?今回は相手が相手だしそんな感情に流されながら戦ってて勝てるやつじゃないってことくらいわかってるし」


「アインさん?」


 その言葉にアインを知る帝国メンバーは耳を疑う、あのアイン・ホワイトが感情に流されるつもりは無いとも受け取れる発言をしたのだ、その発言に帝国メンバー全員同じことを考えた


(((このアイン・ホワイト……偽物か?)))


 確かに間違いでは無いがこいつらは自分の組織のトップをなんだと思ってるのか


 メンバーの半分以上がアインに疑いの目を向ける中、小栗がその疑惑を確かめるため発言する


「あのアインさん……失礼を承知でお願いしたいことがあるのですが」

「何?」

「アインさんの魔法を見せて欲しいのです」

「……はい?」


 そこで流石の私もそのお願いの意味そして周りからの視線を感じ流石に気づく


(ワタシ疑われてんじゃん)


 どこでボロを出した?と記憶を探りながら表面上は冷静に目を細め口を開く


「……何?もしかしてワタシが偽物かなんかじゃないかと疑ってるワケ?」

「……」

「沈黙は肯定と受け取るヨ?ふーん?ワタシ別に変なこと言った覚えはないんだケド」

「ええ、確かに変なことは言ってないです、ですが―貴女を疑うには十分すぎることは言っているんですよ」

「へー?ワタシ気になるな〜教えてくれない?」


 5秒間の沈黙の後小栗はゆっくりと口を開く


「貴女さっき言いましたよね?感情に流されながら戦って勝てる相手じゃないって」

「言ったネ、それが何?」


 普通のことだ、相手は伝説の魔法少女、そんな相手に感情的になって勝てるかと聞かれればほとんどの魔法少女がNOと答えるだろう


「その発言……感情に流される気は無いとも取れますよね?」

「そうだケド」

「そうですか……なら貴女はアイン・ホワイトでは無い」

「……っ!?」


 私が甘かった……!小栗は帝国のブレインであり幹部だそして帝国メンバーの中でもアインといる時間も長い、そんな小栗が今までの発言から私が偽物の可能性にたどり着くことも考えられたはずだ……だが抵抗はさせてもらう


「……」


「貴女の敗因は単純にアイン・ホワイトを知らなかった……ただそれだけです」


 いや、作者なんですけど


「ワタシがアイン・ホワイトを知らなかったネ〜じゃあ聞かせて欲しいんだケド」

「なんですか?」


 ワタシは小栗の目を見ながら知りたいことを聞いてみる


「なんでワタシがアイン・ホワイトじゃないって確信したのカナ?」


「簡単ですよ」


 そして小栗は得意げに話す


「アインさんが……アイン・ホワイトが感情の制御なんて高度で細かいこと出来るわけないでしょ?」

「テメェぶっ殺されたいの?」


 失礼すぎる……こいつアインをなんだと思ってんだ


「今更隠しても無駄ですよ偽物さん、貴女には聞きたいことが山ほどあるんです」

「え?何?こいつ今のでワタシがアイン・ホワイトじゃないって証明したつもりなの?」


 馬鹿なの?死ぬの?というか全員今の話で頷いてやがる、ここって馬鹿しかいないの?


「逃げても無駄です、ここは帝国の中心、私達以外にも周りには50人の魔法少女が待機しています」


 ワタシをアイン・ホワイトじゃないと証明した(つもり)の小栗はまるで自分の軍隊であるかのように得意げに話す、こいつ自分に酔ってやがるな……


「さあ、喋って貰いますよ?貴女が何者で何のためにアインさんに成りすましていたのか、アインさんはどこにいるのk「一回死ね」どべらぁ!?」


 とりあえず落ち着かせるために裏拳でで小栗の頭をシェイクする


「なっ!?あんたねぇこの数相手に勝てると思ってるの!?」

「うるさいヨ馬鹿どもが!?」


 そう言うとワタシは手を振り魔法を発動させる


「ば、馬鹿じゃな……い」


 するとさっきからうるさくしてた加藤が顔を真っ青にし蹲る


「「「え?」」」


 その現象にすごく覚えがある帝国メンバーは冷や汗をダラダラかきながららアイン・ホワイトの偽物(仮)に目を向ける


 その間も加藤は苦しみ悶え暫く震えるとそのまま力尽きたように倒れた


「さて……」


 その声にビクンッと震える一同


「アンタら……遺言は何かあるカナ?」


「「「す……」」」

「す?」

「「「すみませんでした!!!」」」


 全員が綺麗に並び床に頭を打ち付け土下座を披露する、そんな光景がワタシの目の前に広がっていたそんなも金曜日だった


 1時間後とある帝国メンバーが散歩をしながらふとゴミ捨て場を見るとボロボロで瀕死状態の魔法少女が9人燃えるゴミと書かれた紙を貼り付けられて捨てられていたらしい


 オルゴール帝国大戦まで後2日




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