第5話 兄と妹とガールフレンド

楓が土曜日空いているとのことだったので僕たちは近くの大型ショッピングセンターにきていた。

「楓さんでしたっけ?私は妹の結衣です。兄がいつもお世話になってます。」

「結衣ちゃんっていうのね。これからよろしく。」

挨拶をお互い交わし、若干妹が他人行儀感はあるが、楓さんが結衣に寄り添おうとしてくれているので、なんだか仲良くやっていけそうな雰囲気を感じる。

これから楓さんと仲良くやっていくためにも結衣には楓さんと仲良くなってほしい。

「そういえば、楓さんはさと...お兄ちゃんのどこが良くて付き合おうと思ったのですか?」

「妹ちゃん。それはちょっと恥ずかしいかな。それよりも家での聡くんの話を聞きたいよ私は。」

そういえば僕も楓が僕を好きになったきっかけを知らない。手紙では「転校する前から好だった。」としか書かれていなかったし、聞くのも少し気恥ずかしかったのでそこには今まであまり触れてこなかった。

「僕も、楓さんが僕を好きになった理由を知りたいな。」

「聡君まで...も~!今は外にいるんだから誰に聞かれるかわからないじゃん!!」

そう言いながら楓さんは顔を真っ赤に赤らめた。頬に手を当てている。

自分が聞きたいと思うばかりここがフードコートの一角であり、時間的にも人が多いことに配慮ができていなかった。

「ごめん。こっちが無神経だったかも。」

「いえ、大丈夫です。妹さんも大好きなお兄ちゃんがとられちゃうと思ってるのよね。」

「そんな私がまるでブラコンみたいな言い方しないでくださいよ!」

「でも実際そうでしょ?私と合流する前からずっと聡君にくっつくように歩いていたじゃない。」

「結衣も転校ばっかりの生活で友達が少なく、信頼できる人間が家族くらいしかいないんですよ。」

兄妹の関係性は家族によりそれぞれだと思うが、転校が多かったので長く遊べる友達というのはほぼほぼいない。転校生というはイレギュラーな存在である。転校初日から数日間は、転校生という珍しさからみんな声をかけてくるが、次第に普段通りの生活にみんな戻っていく。特に結衣は積極的に人に話しかけていくようなタイプの人間ではない。前々からグループが形成されている女子だとなおさら親しい友達を作るのは難しいのだろう。

「なるほどね。まぁ兄妹の形なんて人それぞれだし?私は聡君が妹ちゃんに浮気さえしなければ全然オッケーよ。」

「なんで僕が結衣に浮気する前提なんだよ!?」

「だって妹ちゃんすっごくかわいいでしょ?私に嫉妬した妹ちゃんが何するかわからないじゃ~ん」

「わっ私はお兄ちゃんに恋愛感情なんてあるわけないじゃないですか!!」

「兄妹で恋愛感情を持つなんてマンガか小説の読みすぎですよ!」

妹が必死に弁明してる。実際一つ屋根の下で暮らしているとお互いの色々なことを知ってしまっているのでたとえ顔が国宝級の美人でも恋愛感情がわかないものである。

そんな話をしながらご飯を食べた。

「この後はどうするか。」

「えっ、お兄ちゃんこの後の予定何も考えてきてないの?」

軽蔑するような目で結衣が僕を見てくる。

「いや。この後最近話題になってるからすの戸締りでも見ようと思ってたんだけど、思ったよりも時間が余っちゃって上映時間まであと一時間くらいあるんだよ。」

「じゃあ楓さん。この服にまっったく興味のないお兄ちゃんを二人でコーディネートしません?」

「今日もお兄ちゃん私が言うまでだっさぁい服装で出かけようとしたんですよ。」

妹が助け舟を出してくれたと思ったとたん余計な一言を言ってきた。自分の中ではかなりイケてる服を着たつもりだったのだが、朝妹と鉢合わせたときに「さとにぃなにその恰好!それで楓さんと会うって正気?とりあえず部屋に戻って服選び直すよ。」といわれグチグチ言いながらも服を選んでくれた。

「いいわね。なんか恋人っぽくて面白そうだし!じゃあまずはあのお店から行ってみましょ。」

こうして結衣と楓さんによる【聡コーディネート大会】が始まった。

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