第3話 転校生は恋人

手紙をもう一度読み直し、僕は教室のドアの前に立つ。

「教室に入るだけなのにこんなに緊張するとは。転校初日よりも緊張するぞ落ち着け俺。」

ドアのガラスは不透明になっており外からも中からも誰が来たのかが分からないようになっている。しかし、よ~く見るとソワソワしている人影が一つ見える。おそらく小山さんだろう。

「本当に来てたのか。これで冷やかしだったらもう生きていけないかも」と思いつつ僕はいつもと変わらないよう装いながらドアを開けた。

「おっおはよぉ~さとるくん...」

明らかに声に緊張が入っている。彼女もまた緊張していたのだ。それを見て少し緊張がほぐれた気がした。

「おはよう、小山さん。本当に朝早くから来たんだね。」

なるべく普段と同じように挨拶を返した。

「そっそうだよ。すごいでしょ私!頑張って起きたんだから~」

そう言って彼女は誇らしそうにしている。

「それよりも聡君さ...下駄箱の中に何か入ってなかった?」

早速彼女の方から話題を振ってきた。

手紙の中に【告白を受け入れてくれるのなら教室に来てください】と書いてあったのだ。仮に僕が手紙に気づかずに教室にきてたらただ恥をかくだけだと思ったのだろう。

「確かに、可愛らしい封筒が下駄箱の中に入ってたし、中身も読んだうえで教室に来てる。」

「つまり、聡君の返事は...そうゆうことでいいんだよね?」

「うん。僕も小山さんのことがこの学校に来る前から好きだよ。僕と付き合ってください。」

「うん!じゃあこれからは恋人としてよろしくね。さとる君」

「よろしく小山さん」

「う~んなんか苗字呼びって他人っぽくない?名前で呼んでよ~さ・と・る・君」

「ちょっとそれは恥ずかしいというか...」

「え~いいじゃん!別に減る物じゃないし」

小山さんはまるでエサを大量に頬張ったハムスターのように頬を膨らませてブーブーいっている。本人的には怒っているつもりだろうけど正直かわいい。

「分かったよ。かっかえでさ..ん...」

恥ずかしくて顔が真っ赤になるのを感じながら小山さんの方を見ると言われた本人もなぜか顔を赤くしてた。

「はっはじめてさとる君が名前で呼んでくれた...」

「楓さん顔赤いよ」

「だってぇ名前で呼び合うなんて恋人になりました~って感じがするじゃん」

「でも恥ずかしいから普段は小山さんでもいい?」

「だ~め!楓って呼んでね。さとる」

うっ。さっきまでは君がついていたからよかったもののいざ呼び捨てで呼ばれるとかなりダメージが来る。これが恋人...

「なんかさっきよりハードルあがってない?」

「えへっ。ばれちゃいましたぁ~」

「しれーと呼び捨てで呼ばせようとしないで楓」

「あ~呼び捨てで読んだ!」

「呼び捨てで呼べって言ったのはそっちだろ!」

「ほっほんとに呼ぶとは思わないじゃん!!」

そんなことをしていたらあっとゆう間にみんなが登校してきて、僕たちの朝学一日目は告白をして終わった。

「今日は私のせいでできなかったけど明日こそは朝学しようね。さとる」

「でもそのおかげで一番欲しかったものが手に入ったので。」

「さとるのバカ」

「ん?なんか言ったか?」

「なんでもない!もう!SHR始まるよ前向きな!」


僕の初恋の人は恋人へと変わった。

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