第2話 初恋とラブレター

 小山さんが転校して来てから数日が経った。彼女は持ち前の人当たりの良さからクラスの人達とすぐに馴染み、まるで入学初日からいたのではないかと錯覚するくらいクラスメイトとしての違和感が無くなった。そんな彼女が隣の席の僕に不意に話しかけてきた。

「ねーねー聡君。聡君はいつも教室に朝早くからいるけど何時に来てるの?」

「大体7:30くらいかな。家だと集中できないから朝早く学校に来て自習してるからね。」

「えっ!?7:30...しかも朝学もしてるなんて聡君すごいね!!」

「来年受験生だし、今の内から勉強しといたほうが後々楽かなって思ってるだけで別にすごくはないよ。」

そう僕らは高校二年生受験に向けてある程度は準備しておかなければ三年生になった時にはすでに手遅れという状況になりかねない。それを回避するために僕は毎朝早めに学校に来て勉強をしている。

「いやいやめっちゃすごいよそれ!ねぇねぇ私も一緒に朝早く学校来て勉強してもいい?実は前通ってた学校と進捗が違くて分からないところとかあるんだよね...えへへ」

目を輝かせながらも少しバツが悪そうな顔をしてこちらを見てくる。初学校によって進捗に違いがあり、授業についていけなくなるというのは実際に僕も体験しているし、なんせ初恋の人の頼みだ。断るわけにはいかない。

「全然いいよ。むしろ人に教える方が勉強になるっていうし僕は歓迎だよ。」

「ありがとっ!じゃあ明日から頑張って起きるね!!」

そう言った彼女はなぜかもの凄く意気込んでおり、終始ウキウキしている。僕としては初恋の人と毎朝二人で勉強ができるというご褒美イベントが急に発生し、今日は眠れそうにないというのに。


翌日朝下駄箱を見るとすでに小山さんの靴がある。

「昨日言ってたことはマジだったのか...ん?何か下駄箱に入ってる?」

昨日の帰りには何も入ってなかったはずの僕の下駄箱の中に一通の封筒が入っていた。

「これってラブレターってやつか?」

信じられないと思いながらもう一度確認するも確かにそこに【聡君へ】と可愛い文字で書かれたピンクの封筒は存在していた。慌てて封筒の中身を確認する。


聡君へ

この高校に来る前からあなたのことが好きでした。あなたが急に転校してしまったあの日から私はとても寂しく、つらかったです。でもこうして高校生になって私が転校することになって改めて出会うことができました。これはもう赤い糸で結ばれているとしか考えられません。転校すると決まった時は新しい高校でやっていけるかとても不安でしたが、教室であなたの顔を見てうれしいと感じるとともに安心感を覚えました。もし、私の告白を受け入れてくれるのであれば、そのまま教室に来てください。私はあなたの隣の席で待っています。


「嘘だろ...小山さんが僕のことが好き?しかも転校する前から?」

差出人は書いてないが内容から小山さんであることは明らかだった。正直信じられない。あの小山さんが僕のことが好きだということに。だが、僕の返事は最初っから決まっている。なんせラブレターを貰った相手は初恋の人だ。僕はそのまま緊張した足取りで教室へと向かった。

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