恋人を奪われパーティーを追放された親切おにいさん「あの時助けていただいた〇〇です」が揃って恩を返しに来て気付けば前パーティーを追い抜いてざまぁしていましたとさめでたしめでたし
第6話 嘘吐きおじさんは領主さまを騙そうとしましたとさ
第6話 嘘吐きおじさんは領主さまを騙そうとしましたとさ
「申し訳ございません!」
屋敷ではウソーが大きく頭を下げ、この屋敷の、そして、街の主である領主ルマン・ジェントリーに謝罪をしていた。
「そうか……下請けの男が」
「そうなのです! 仕事がないのでどうにか融通して欲しいとみっともなく縋りつくので、私も情けの心で信用しやらせたのですが、どうやら……その男正真正銘のクズだったようで」
頭は上げず下げたままウソーは申し訳なさいっぱいの説明をし続けたが、心の中でずっと笑っていた。
(これでバリィからの依頼は達成し、金は貰えるし、目の上のたんこぶの領主には一泡吹かせてやることが出来た。くっくっく)
ルマンは、誠実で立派な領主として崇められていたが、ウソーのような不正をしてでも楽して儲けたい人物にとっては非常に腹立たしい存在であった。
そんなルマンの依頼を失敗して、がっかりさせる。
子供のような願望であったが、ウソーにとっては何よりも代えがたい蜜であった。
そして、今回、ウソーは何もしていない。
領主からの依頼を引き受け何も手を付けずに機会を待ちカインに押し付ける。
それだけで自分の欲望は満たされ、金も手に入る。
(本当にまじめに働くなんて馬鹿らしくなるわ)
「本当に申し訳ございませんでした。それでは、私は、ギルドに行き、その者の捕縛依頼を出してまいりますので」
バリィと懇意の受付嬢に捕縛依頼を出し、それをバリィ達が引き受け、捕縛、投獄、処刑。
これがバリィの計画であった。
何故バリィがあんな冴えない男を目の敵にするのかウソーには分からなかった。
(まあ、弱者を徹底的に甚振りたい気持ちは分からんでもないが)
ウソーがぼんやりと考えながら扉に手をかけると、領主から声がかかる。
「ああ、待ってくれ。ちなみに、その男の名は……」
「はあ、その、カインという名の魔工技師でございます」
「カイン!?」
領主は目を見開き驚いた様子を見せ、その様子に今度はウソーが驚く。
「ど、どうかされましたかね?」
「いや、そうか……カインというのか。いや、気にするな。こっちの話だ」
「はあ、それではしつ……」
と、その部屋を後にしようとした時、扉からノックの音が。
「なんだ? 今、来客中だぞ」
少し声を荒げたルマンだったが、扉の向こうにいる従者はそれでも伝えたいと声を上げた。
「魔工技師カイン様が、旦那様がご依頼なされた魔防布を持ちになられました!」
ウソーは主であるルマンの言葉に逆らい話を続けたことにも驚いたが、それより何より、その後の言葉に更に驚いた。
(あの男が、ロナイン式の魔防布を仕上げて持ってきただと!?)
ウソーも腐っても魔工技師である。その難しさは良く分かっており、ありえないと首を振った。
「……先ほどの話と食い違いがあるようだが」
領主は、従者を咎めるでなく、ウソーにその目を向けたが、ウソーは平気な顔をした。あり得ない、あり得るはずがない。あの男に出来るはずがない。
そう確信していた。
「何かしらの方法を騙そうとしているのかもしれません。魔防布の性能を確かめるためにも同席させていただいても?」
(出来るわけがない! そんな短時間で出来たら、王宮お抱えの魔工技師になれるレベルだぞ!)
ウソーは、同席することでカインの魔防布の偽装を明らかにし、また、自分の話との食い違いを避けようと考えていた。
「わかった。その、カインをこちらに」
少ししてカインが先ほどの従者に連れられてやってきた。
とてもぱりっとした恰好をしたそれでいてうすぼんやりとした雰囲気の男がそこにいた。魔坊布らしき布を持って。
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