1.3.12 猫カフェデート
今日はシルヴィアとの埋め合わせのデートだった。
駅前で待ち合わせだった。
同棲しているなら一緒に家を出ればいいと思うかもしれないがそれだとデートの雰囲気が出ないので待ち合わせにした。
セフレ(自称)とデートというのもおかしな話であるが。
10分前に俺は駅前に到着する。
「お待ちしてました、お兄ちゃん」
「早いな!?いつから待ってたんだ?」
「1時間前ですがなにか」
「早すぎるだろ……」
「お兄ちゃん何か言うことがあるんじゃないですか?」
言うこと……?
ああ、服か。今日のシルヴィアは白のワンピースを着ていた。
「ああ、その服似合ってるぞ」
「ふふ、ありがとうございます」
シルヴィアが微笑む。
「じゃあ行きましょうか、お兄ちゃん」
「ああ、そうだな」
俺たちは目的地に到着した。
いわゆる猫カフェだった。
だがただの猫カフェではない。
店員さんが猫耳としっぽを着けたまるでメイド喫茶のような接客をしてくれる猫耳メイドカフェだった。
シルヴィアから希望を出されたときは驚いた。
猫が好きなのは知っていたが猫耳メイドカフェに興味を持つとは思わなかったのである。
「おかえりなさいにゃんご主人様、お嬢様!!」
俺たちは店の中に入るとそう決まりきった(メイドカフェでは)接客をされる。
「2名様ですね。ではご案内しますにゃん」
店の中では猫が思い思いにくつろいでいた。
すやすや寝ている黒猫、猫じゃらしで遊ぶ三毛猫、キャットタワーでくつろぐ白猫様々な猫がいた。
俺たちは猫耳メイドの店員さんに席を案内される。
俺たちはパフェを注文した。
「お待たせしましたにゃん。パフェになりますにゃん」
ただのパフェではない。
スカイツリーのように高い超高層パフェだった。
バニラアイスにイチゴアイス、チョコアイス、シリアル、ヨーグルト、プリン、生クリームがのっていた。
「おいしいです!! ね、おいしいですよね、お兄ちゃん?」
「ああ、おいしいな、シルヴィア」
「メロンアイスもおいしいですよ。1口食べますか?」
「本当か?ありがたくいただくよ」
「お兄ちゃん、はい、アーン」
まさかのはい、アーンだった。
「アーン」
義妹にはい、アーンされるのは少し気恥ずかしかった。
「お兄ちゃんは今日、店員さんに色目使って楽しんでましたよね」
「色目……!?使ってねーよ」
「やっと私のこと意識してくれましたね。今日は私とのデートですからね。私だけ見ていてください」
食後、俺たちは猫と戯れていた。
「おぉ、この子、俺の足に乗ってくれた……しかもすやすや寝てくれた」
俺はあぐらをしていたのだが灰色の猫が一匹乗ってくれたのである。
「猫カフェの猫は人懐っこくて温厚というのは本当のようですね」
俺は猫を撫でた。もふもふで気持ち良かった。そこで衝撃的な場面を目撃する。
「にゃーん。元気でちゅか〜? もふもふでかわいいでちゅね〜」
シルヴィアが赤ちゃん言葉で猫と遊んでいたのである。
「シ、シルヴィア?」
「ハッ……今のは見なかったことにしてください」
シルヴィアは恥ずかしそうに顔を赤らめていた。
店員さんが俺たちの元にやってきた。
「今、猫耳メイド体験をやってるんですけどお嬢様どうですか?」
「やります」
即答だった。シルヴィアは店員さんに案内されて別室に向かった。
そして戻ってきた。シルヴィアは猫耳にしっぽ、メイド服を着ていた。
「お兄たん、おかえりなさいだにゃん。注文をお聞きしてもいいですかにゃん」
なん……だと……!?
お兄たんしかも語尾ににゃんとは。
かわいい、そう思った。
「お兄ちゃん、何か変だったですか? こう接客するよう店員さんに指示されたのですが」
シルヴィアがキョトンとした顔で聞いてきた。
「いや、変じゃない。……あまりにかわいくてちょっと動揺しただけだ」
「かわいいですか!? ふふ、ありがとうございます。で、注文は?」
「カフェオレで頼む」
「承知しましたにゃん」
しばらくしてシルヴィアがカフェオレを運んできた。
「お兄たん、おいしくなるおまじないをしますにゃん」
「え?」
「おいしくなーれ。おいしくなーれ。萌え萌えきゅん♡」
シルヴィアは手でハートを作ってみせた。
ぐはっ……俺は心臓を撃ち抜かれた。
俺のライフはゼロになりそうだった。
こうして俺たちは猫カフェデートを楽しんだのだった。
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