1.3.3 アイドル声優志望

 8月中旬。


 俺は見慣れない天井で目が覚めた。


 実家に来て2日目の朝だった。


 食堂に行くとおばさんが起きていて朝食の準備をしていた。


「おはよう、光真君。早起きだね」


「おはようございます」


「よかったら花恋のこと起こしてきてくれるかな?」


「分かりました」


 それで俺は花恋の部屋に向かった。


「花恋、起きてるかー?」


「どうして戦わないといけないの!? お兄ちゃん!?」


 いきなりの大声でビクッとする。


 花恋起きてたのか。このセリフはーー。


「運命!? 私たちが戦うのが運命だって言うの、お兄ちゃん!?」


 間違いない。


 このセリフはゲーム『ヴェルデルフィア・アドベンチャー・オンライン(VAO)』に出てくるユリシア・フォン・ヴェルデルフィアのものだ。


「花恋、入るぞ」


「お兄!?今のセリフ聞いて……!?」


「……花恋、お前声優さんだったのか?」


「……うん、そうだよ」


「マジか!?すごいな」


「いや、私はまだまだ駆け出しだし全然だよ」


「今のセリフVAOだよな」


「うん。今度アニメ化されるからユリシア役狙ってるんだ」


 その後、俺たちはVAOについて話をした。


 VAOとは炎龍によって国を奪われた亡国の姫騎士サクヤ・フォン・リッテンフェルトが炎龍を討伐することで勇者として名を馳せ、何十回もの戦争で勝ち進んでいくというストーリーである。


 ちなみにサクヤは西の勇者であり、東の勇者は魔王を討伐したシグルド・フォン・ヴェルデルフィアという設定である。


 シグルドは主人公サクヤの親友であり、戦友である。


 ユリシア・フォン・ヴェルデルフィアとはシグルドの妹でありシグルドの勇者パーティーに参加していた。


 シグルドは第一次オリーヴ戦争で戦死するという設定である。


 シグルドの戦死によって絶望するサクヤだが(闇堕ちする)周囲の人々によって徐々に気力を取り戻していくというストーリーである。


 VAOはタワーディフェンス、アドベンチャー、バトルロワイヤルという3つのパートに分かれている。


 タワーディフェンスパートは自分でダンジョンを作って攻めてくる敵を迎え撃つというパートである。


 アドベンチャーパートはストーリーを読んでいくというパートである。


 バトルロワイヤルではよくあるアリーナであり対人戦が楽しめる。


 詳しくはカクヨムに挙げている拙作『ヴェルデルフィア・アドベンチャー・オンライン(VAO)〜魔王城にこもってたらいつの間にかランクカンストして魔王と友達になりました〜』をご覧ください。(ダイレクトマーケティング失礼します。)


「つまり花恋はアイドル声優の卵ってことか?」


「うん。七瀬カレンっていう芸名で声優の駆け出しやってるよ」


「おぉ、マジか。ユリシア役とれるといいな」


「お兄、応援してくれるの?」


「当たり前じゃないか。従兄妹の夢は応援するさ」


「勝手に許嫁になったのに……?」


「それは思うところはあるし、今でも納得はできないけど……。従兄妹の夢は応援するさ。アイドル声優になれるといいな」


「……お兄、ありがとう」


 それから俺たち2人は小一時間ほどアニメやゲームの話で盛り上がった。

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