第15話 1.3.3 アイドル声優志望
8月中旬。俺は見慣れない天井で目が覚めた。実家に来て2日目の朝だった。食堂に行くとおばさんが起きていて朝食の準備をしていた。
「おはよう、光真君。早起きだね」
「おはようございます」
「よかったら花恋のこと起こしてきてくれるかな?」
「分かりました」
それで俺は花恋の部屋に向かった。
「花恋、起きてるかー?」
「どうして戦わないといけないの!? お兄ちゃん!?」
いきなりの大声でビクッとする。花恋起きてたのか。このセリフはーー。
「運命!? 私たちが戦うのが運命だって言うの、お兄ちゃん!?」
間違いない。このセリフはゲーム『ヴェルデルフィア・アドベンチャー・オンライン(VAO)』に出てくるユリシア・フォン・ヴェルデルフィアのものだ。
「花恋、入るぞ」
「お兄!?今のセリフ聞いて……!?」
「……花恋、お前声優さんだったのか?」
「……うん、そうだよ」
「マジか!?すごいな」
「いや、私はまだまだ駆け出しだし全然だよ」
「今のセリフVAOだよな」
「うん。今度アニメ化されるからユリシア役狙ってるんだ」
その後、俺たちはVAOについて話をした。VAOとは炎龍によって国を奪われた亡国の姫騎士サクヤ・フォン・リッテンフェルトが炎龍を討伐することで勇者として名を馳せ、何十回もの戦争で勝ち進んでいくというストーリーである。ちなみにサクヤは西の勇者であり、東の勇者は魔王を討伐したシグルド・フォン・ヴェルデルフィアという設定である。シグルドは主人公サクヤの親友であり、戦友である。ユリシア・フォン・ヴェルデルフィアとはシグルドの妹でありシグルドの勇者パーティーに参加していた。シグルドは第一次オリーヴ戦争で戦死するという設定である。シグルドの戦死によって絶望するサクヤだが(闇堕ちする)周囲の人々によって徐々に気力を取り戻していくというストーリーである。
VAOはタワーディフェンス、アドベンチャー、バトルロワイヤルという3つのパートに分かれている。タワーディフェンスパートは自分でダンジョンを作って攻めてくる敵を迎え撃つというパートである。アドベンチャーパートはストーリーを読んでいくというパートである。バトルロワイヤルではよくあるアリーナであり対人戦が楽しめる。
「つまり花恋はアイドル声優の卵ってことか?」
「うん。七瀬カレンっていう芸名で声優の駆け出しやってるよ」
「おぉ、マジか。ユリシア役とれるといいな」
「お兄、応援してくれるの?」
「当たり前じゃないか。従兄妹の夢は応援するさ」
「勝手に許嫁になったのに……?」
「それは思うところはあるし、今でも納得はできないけど……。従兄妹の夢は応援するさ。アイドル声優になれるといいな」
「……お兄、ありがとう」
それから俺たち2人は小一時間ほどアニメやゲームの話で盛り上がった。
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