第14話 1.3.2 許嫁兼従兄妹

 8月中旬。俺とシルヴィアは実家に帰省中だった。親父とオリヴィエさんは新婚旅行で世界一周中なので俺とシルヴィアの2人だけの帰省だった。今回の帰省の目的は1つ。新しく家族となったシルヴィアの紹介だった。


 新幹線で揺られること2時間。親父の実家がある金沢に着いた。シルヴィアが金沢初ということで軽く金沢の観光をした。兼六園やひがし茶屋街、金沢城を見て回った。


 ひがし茶屋街では金箔ソフトクリームというのを食べた。アイスに金箔が散りばめられているという面白いソフトクリームだった。暑かったので冷たいソフトクリームはとてもおいしく感じた。


 その後、タクシーに乗って実家に向かった。俺のおじいちゃんと親父の弟のおじさん夫婦と従兄妹が住んでいる。


「ただいま帰りましたー」


「おかえりっ、お兄!! ずっと待ってたよー」


 美少女がダッシュで抱きついてきた。その美少女の名前は結城花恋ゆうき かれん。俺の従兄妹である。


「お兄ちゃん、その子誰? それにお兄って?」


 シルヴィアが暗い声で尋ねてきた。


「ああ、俺の従兄妹の花恋だ。昔からお兄って呼んで懐いてきてるんだよ」


「えへへー。お兄の匂いだー」


「距離近すぎじゃない?」


「それをシルヴィアが言うのか……」


 身体洗いあっこのときはものすごく距離近いじゃないか。


「ほら、花恋、そろそろ離れて挨拶しろ」


「挨拶?ああ、シルヴィアさんね。話は聞いてる。よろしくね」


「よろしくお願いします」


 その後、シルヴィアはおじさん夫婦に実家を紹介してもらった。実家はとても広い和室の家なので俺が子供の頃はよく迷子になってたっけ。


 その間、俺と花恋は雑談をしていた。学校であったことをお互い話した。


「それでね、お兄、沙夜子さよこが突然何してるんばいって言い出したんだー。いきなり博多弁!? って面白いでしょー」


「ああ、面白いな」


 そこで沈黙が場を支配する。


「お兄、大事な話があります」


「大事な話?」


「お兄、ずっと好きでした。付き合ってください」


 うん、知ってた。昔から花恋は俺に懐いていて将来結婚するって言ってたからなー。俺のことが好きだということも昔から常識だった。


「ごめん、俺には彼女がいるんだ」


 俺には結衣ちゃんが結衣ちゃんがいるからね。


「……めない」


 え?


「私、諦めないから!! 絶対お兄と結婚するから!!」


 そう言って花恋は部屋を出ていった。


 午後7時。夕食のため俺たちは食堂に集まっていた。


「ああ、ちょっといいか。夕食の前にちょっと話がある」


 おじいちゃんが発言する。話?


「この度、光真と花恋は許嫁となった」


 え! え? ええーっ!!!


 図ったな花恋。まさかじいちゃんに取り入るとは。


「なお、これは決定事項だ。お互い大学を卒業したら結婚してもらう」


「ちょっちょっ待ってくれよ。じいちゃん。俺には彼女がいるんだが!!」


「愛人の1人や2人いても構わんよ」


「そんな不誠実なことができるか!? ……大体おじさんたちは納得してるんですか?」


「ああ、うん。どこぞの馬の骨に娘をやるくらいなら光真君の方が安心だよ」


「花恋は光真君のこと大好きだしお似合いだと思うよ」


 そんな……そんな馬鹿な。


「いや、親父の許可をとったんですか?」


「兄さんに電話したところ二つ返事でOKだったよ」


 親父〜〜!!


「えへへ。よろしくね、お兄……。いや、ご主人様」


 ぐわっ。ご主人様。美少女にご主人様と言われるのがこんなに破壊力があるとは。こうして俺と花恋は許嫁となるのであった。

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