1.2.2 ストーカー

 1ヶ月後。


 ゴールデンウィーク直前ということで緩みきった雰囲気の中、俺は授業を受けていた。


 科目は英語である。


 英語でも優奈と同じクラスだった。


 これで幼小中高大と同じクラスになることが確定したのである。


 腐れ縁ってレベルじゃねーぞ。


 俺と優奈、水原さんは同じSクラスだった。


 一番レベルの高いクラスである。


 外国人の先生に習うという授業だった。


 水原さんと同じクラスというのが唯一の救いだった。


 最近、気になることがある。


 それは人の視線である。


 同じ視線をいつでも感じるようになった。


 朝の大学への通学中、授業中、昼休み、夕方の帰宅中と同じ視線を感じるようになったのである。


「綾人。最近、人の視線が気になるんだけど」


 俺と綾人は互いに下の名前で呼ぶようになっていた。


「それって光真の気のせいじゃない?」


「そうかな」


「人の視線なんていつでも感じるよ。僕も。だから気にしすぎだと思うよ」


 ふむ、確かに気のせいな気がしてきた。


 だが事態は平穏とはいかなかった。


 今日の帰り道でも同じ視線を感じたのである。


 この視線の主を見つけ出そうと俺は作戦を考えた。


 人通りの少ない路地裏に向かったのである。


 少し進んだ後、後ろを振り返った。


 今、物陰に隠れたのがストーカーの正体か。


「おいっあんた。何の用だ!!」


 大きな声を出して威嚇する。


 ストーカーの正体がビクッとする。


 そこで顔を見る。美少女だった。


 ハーフだろうか茶髪の髪がゆるふわないかにも快活そうな美少女だった。


 ストーカーとは思えないくらい美少女だった。


「わ、私。シルヴィアって言います。あなたの事を一目惚れしてずっと追いかけてました。ごめんなさい」


「いや、謝らくても……俺のことが好きなのか」


「はい、好きです。付き合ってください」


「……ごめん。俺には彼女がいるんだ」


 水原さんが俺には水原さんがいるからね。


「じゃあ、セフレでいいです」

 

 え?


「セフレでいいです!!」


 2度言った。


 いやいやいやいや、セフレっていろいろ段階飛ばしすぎだろ。


 大体、高校時代付き合っていた優奈ともそんな関係になったことないのに。(チキンで誘えなかったチェリーボーイだ。俺は。)


「いやいやいやいや、俺たちがセフレ? まだ1度しか会話してないのに?」


「今から証明します」


 そう言って俺の手をとり彼女の豊かな胸に押し当てた!


 幸せな感触が俺の手に広がる。


「な、何してるんだ。あんたっ!!」


「これが証明です。いつでもどこでも私の胸や尻に触ってもらって結構です。これがセフレになるという私の覚悟です」


 いつでもどこでも胸や尻に。


 男なら普段妄想するシチュエーションであろう。


 だが現実になるとただただ困惑しかなかった。


「ええ……?」

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