捨て犬さんと拾いもの
夜を通して走った私たちは、空が白じむ前に街道に出ることができた。
そこではたと手を打ち思い出した。
そう、シリカ帝国では私たちは迫害の対象になりかけてるのだった。
ただ魔女っぽい服を着てるだけですよ~とシラを切れる私と違って、人狼の姿のシリウスさんは、どうしたって言い訳出来ない。
「誰かに見つかったら
「あっそれもそうだわ。シリカ帝国って最近、そこら辺やばいんだっけ?」
「ええ、とってもやばいです。……そう言えば全然聞いてませんでした。シリウスさんってこちら出身の方ではないんですか?」
「ああそうだが、あっ……、やべ!」
彼はさっと私を抱きかかえると、そのまま街道を外れた林の中へと連れ込んだ。
フカフカの毛並みに包まれた私は、体を抱えられたまま、街道を行くそれを見た。
月明かりに照らされる街道を、たいまつで照らし進む、十数の騎兵。
その誰もが、金色の炎の意匠を胸当てに彫り込んでいる。
シリカ帝国の「ブレイズ」と呼ばれる連中だ。燃え立つ炎を意味する古語を
「なんか見るからにやばそうな連中だな」
「ええ、見つからなくてよかったです。私やあなたのような存在を焼き尽くそうとしている、シリカ帝国の連中です」
「何してくれてんのかねぇ……」
「さぁ?少し街が大きくなったから、山も川も、世にある全てを自分のものと思い込み始めたのでしょう」
「野にいる人とも獣ともつかないもの、それらすべてを焼き払いたいようです」
「それってバッチリ俺も含まれるな。イタチの賞金をもらったら、とっととずらかるとするか……行くあてとかあんの白魔女さん?」
……夜逃げをするつもりでしたが、目的地は特になかったですね。
行くあても何も、ありませんでした。
「そういえば、特に行くあては、無かったですね」
「えぇー?それで、二本の足でテクテクと?」
「なんだか心配になってきたな……頭は俺より絶対に良いはずなのに、何でそこが抜けてるんだ」
「世事に
「おおかた、金も大して持ち合わせてないな?」
「正解です」
私はピシッとシリウスさんに指を立てて見せた。
なんとも勘のいいお方です。
「
「命を救われたよしみもあるし、白魔女さんがシリカ帝国を出て、しばらく落ち着くまでは面倒見てやるよ」
私はついおかしくなって、シリウスさんに抱えられたまま、くすくすと笑いだしてしまった。
「あ、なんか変なこと言ったか?」
「フフッ……捨て犬さんに拾われてしまいました。それが可笑しくて」
「……ハハッ、ちげえねえやっ!」
・
・
・
こうして私カマラは、捨て犬のシリウスさんと一緒に旅をすることになりました。
私と彼、どちらが先にお互いを拾ったのか、まあそれは諸説あります。
ともかく私たちは、この先も、行って、生きる事を許されたようです。
ひとまず目指すところは、シリカ帝国から遠く離れた、世界のド田舎。
シリウスさんの故郷、「ホワイトバック」です。
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