第2話

 今回は特別に、「凍え炬燵東海道」で知られる、漫画家しらす三郎先生にお話しを伺いました。最新作「許されはんぺん」の裏話もたくさんしてくれました。今回は、先生の自宅の近くにある廃墟でインタビューを行いました。喧嘩をしている不良たちの声が煩くて、先生のお話がほとんど聞こえなかったのですが、何となくこんなことを言っているであろうと推測し、文字に起こしました。頑張りました。


―今回は突然のインタビューとなりました。心境はどうですか。


しらす三郎:「心境も何もないよ。何で夜中の三時にインタビューを受けなきゃならないんだって、そういう苛立ちは多少あるけど」


―そうですか。新作「許されはんぺん」はどういったストーリーなのでしょうか。


「無頼者の男が、はんぺんを片手に厳しい世の中を生きていく物語。時にははんぺんを人に投げつけ、時にははんぺんで涙を拭う。感動的なロードムービー的な話だね」


―なるほど。どうでもいいですが、裏話などあればお教えください。


「はんぺんの実物を見たことがなかったので、作画が大変だったね。資料を集めるのに苦労したよ。アシスタントが急に不倫し出して五人全員が来られなくなったときは危なかったけど、四コマ漫画にシフトすることで難を逃れたね」


―あ、そうですか。最新作の反響はどうですか。


「なんにもないな。本当に雑誌に掲載されているのか疑問だね。『週刊青年パイナップル』という雑誌に掲載されているらしいんだけど、俺、実物を見たことないんだよね」


―はいはい。僕も見たことないです。ストーリーはどういった時に思いつきますか。


「趣味のピンポンダッシュをしている時かな。後はレゴを踏んだ時とか。酒飲みながら、レゴ踏むのが好きなのよ」


―へー。最新作は最終章に入って十年近く経っているのですが、いつ終わるのですか。


「終りは見えないね。最後のコマは夢落ちって決めてるんだけど、そこにどうつなげるか、それが難しい。十一年連載しているわけだからさ。半端な展開は許されないわけ。読者を納得させるのはやはり難しいね」


―はあ。先生は本作と同時に「月刊中年アタック」で「フラフープ無頼男」を連載されていますが、これはどんな内容ですか。一応訊きますけど。


「無頼者の男がフラフープをしながら練馬を歩き回る話だね。彼はフラフープを回し続けないと死ぬんだ。そこで生まれる感動的なドラマ。ありきたりな設定だけど、俺なりの新しい視点で描ければと思ったんだよ」


―ふうん。先生は他にも「年刊壮年パパラッチ」で「超無頼男」を連載されていますが、これは何ですか。


「何だろうね」


―ほおー。先生はその他にも「世紀刊老年ピーチマンゴー」で「続超無頼男」を連載されていますが、これはどうですか。


「一世紀に一回しか刊行されない雑誌らしいから。まだ一回も載せてないね。実物を見たことがないから、本当にある雑誌なのか、わからないし」


―で、今後はどうするの? 展望とかさ。


「今年六十になるからさ。そろそろ引退しようかなと思ったんだけどさ。連載を二十くらい抱えたまま引退できないなと思って。単行本もたくさん出てると思うんだけど、実物を見たことがないんだよ。そんな感じなんで、まだ漫画家としての実感が湧かないんだよね。だからまだまだ辞められないという」


―話の途中で悪いんだけどさ、そろそろ帰りたいので終わります。ありがとね。


「え?」


しらす三郎:1960年「無頼者渋谷に現る」でデビュー。重厚で広大な世界観のラブコメを得意とする。駄目男と美少女の瑞々しい恋愛模様を描くことに定評がある。「日刊幼年コウロギ」で発表した「無頼男の悲しみよ永遠に」でノーベル賞ラブコメ部門準最優秀賞を受賞。「分刊赤子チンアナゴ」連載の「無頼すぎた男」はラブコメの金字塔とされる。鼻をほじる癖あり。


インタビュアー、ろくろ首:首の長い妖怪。鼻をほじる癖あり。


編集後記:お互いの鼻をほじりながらのインタビュー。とても楽しかったです!


最新作「許されはんぺん」全一巻大不評発売中。(絶版ですが、在庫あります)

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