【076】氷の令嬢でいられるはずだった――貴方がいなければ

 舞台は令和日本。学園の有名人にして高嶺の花、「氷の令嬢」と称される主人公の素顔は、幾世紀を超えて転生を繰り返してきた亡国の姫君。一族の仇への復讐を誓った彼女は、仮初めの現世で周囲と馴染むことを良しとせず、孤高の才媛として級友達にも心を開かず生きる――はずだったが。

 そんな彼女の前に現れたイケメンが、今日も今日とて彼女の調子を乱してくるから一苦労。全女子からの憧れの眼差しを一顧だにせず、主人公に学校の内外で付き纏ってくるこの俺様男の正体こそ、一族の秘密を握るもうひとりの転生者なのだ。

 時にシリアスに敵と斬り結び、時にコミカルに学園を引っ掻き回し、二人は次第に腐れ縁を深めていく。静かに燃える炎が凍てついた心を溶かすように、氷の姫がじわじわとほだされてデレていく過程は胸キュン必至だ(口では色々言いながら、結局は彼の存在が救いなんだろうな……)。

 時折入る、二人の過去に触れた挿話も印象深い。ある時は炎に包まれた城内で、ある時は砲弾飛び交う戦地で――幾度となく引き裂かれてきた二人の恋路は、この平和ボケの国で今度こそ成就するのか。異色のラブコメの行き着く果てを楽しみに見守りたい。

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