【037】幻想的なのにリアルな世界で紡がれる運命の歯車

 海に囲まれた大陸は、中央の大国といくつかの公国から成る。大国は小国を統べ、覇権を握ろうと画策を巡らす。しかし思うように事は運ばず、常にその邪な企みは阻まれる。

 ここまでであれば、昨今流行りのファンタジーなら都合の良い設定だろう。果たして異世界からの勇者が無双するのか、それとも亡国の姫が婚約破棄して敵国の王子を味方につけるのか?

 そうではない。ライトノベル界で人気のワードは一つも帯に出ないだろう。ここに繰り広げられているのは一つの歴史である。

 人々の自由を守り、争いを止めるため、暗躍するのは一人の女性。大国の君主を前に臆せず、背筋を伸ばし、毅然と言い放つ。


「国の大きさは領土や民の数で決まるのではない——誇りと、優しさだ」


 命を賭して女性が守ろうとするものは何か。彼女の抱える闇と、それゆえの強い輝きの理由とは。


 陰謀と策略、希望と愛が交錯し、運命の歯車は動きを変える。


 この物語は、一つの歴史である。本作品を読み終えた時、現実ではないはずなのに、読者は共にこの世界を生きる。

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