【002】弱い者と強い者。食う者と食われる者。純なる愛と邪なる思い。――曖昧な境
物語には登場人物がいます。登場人物には役割があります。物語の構成上、不可避の大前提です。
彼は主人公、彼女はヒロイン、あれは悪役それはモブ――物語を追う読み手は、無意識に類型を登場人物たちに重ねます。
物語の側も、特に「良い物語」であればあるほど、彼ら彼女らが誰であるかを早期に示してくれます。人物たちの位置づけを悟り、役割を類推して、読み手は物語を追います。
多くの場合は「主人公」に自分を重ねながら。
さて、本作の構図は一見単純です。
勇敢で純粋な主人公。過酷な運命に翻弄される、美しく哀れなヒロイン。ヒロインを虐げ続けた、悪意に満ちた周辺の人々。
主人公は憤ります。世界の不正と、人心の邪悪に対して。
主人公は立ち上がります。歪んだ世界から、ヒロインを救うために。
レビューの筆はここで置きます。この先は、ネタバレチェックがあっても明かすべきではないでしょう。
ですが本作読了後、読み手は思うことでしょう。
登場人物たちの「役割」は、語られた通りのものだったか。
作中で結ばれていた像は、はたして実態を正しく表していたのか――
スカッとしたい時にはお勧めしません。
ですが、霧深い迷路で煙に巻かれたい日には、ぜひどうぞ。
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