第一ターム

投稿レビュー

【001】辞書? 公文書? 参考文献リスト? いいえ、異世界ファンタジーです。

「設定語りで話を始めるな」。巷に溢れる創作論で繰り返し言われている内容です。

ですが本当にそうでしょうか?

設定の説明で始まる話は面白くないのでしょうか?

本作を最後まで読めば、その認識はきっと崩れ去ります。


本文をクリックした次の瞬間は、確かに面食らうかもしれませんね。

本作の1話目は、辞書的な用語定義の羅列で始まります。

さらに2話目は、公文書めいた難解かつ事務的な文章による、国家や都市の概説。

その後も文献の参照や詩句の引用など、およそ「物語」とは言い難い、設定をそのまま切り出したような文章が延々と続きます。

途中で苦痛になり離脱する読者さんが大半でしょう。気持ちは分かります。


しかし本作の真価は、それらの設定群に「整合性がない」ことに気付いた瞬間、立ち現れてきます。


神話と経典の差異。

口承詩と公文書の矛盾。

地方ごとに違う、同じ言葉の意味。

それらが何を意味するのか。


全ての謎が一つに繋がった瞬間の知的興奮は、おそらく本作以外では得られないでしょう。

これもまた、異世界ファンタジーの一つの形。

「物語」だけがファンタジーではないと、本作は知らしめてくれます。


覚悟と根性がある方には、ぜひともお勧めいたします。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る