第6話
「これからどうしようかしら……」
ようやく部屋に辿りついたアリスは、懐かしのベッドへと倒れ込む。
しかし記憶にあるよりも、身体へ馴染まない。
漂う空気も、どこか他人の部屋のようだ。
ここに着くまでにたくさんの使用人たちに話しかけられた。
アリス様アリス様アリス様アリス様アリス様――。
みんな決まって、アリスに何か期待するような目を向けてきた。
体調が悪いと言うと大人しく引き下がったのは幸いだったけれど、一体何がどうなっているのかしら……。
そしてなんとなしに部屋を見渡すと、どこか違和感を覚えた。
正体を明らかにすべく部屋をあてもなく歩き、本棚へと近づいたところで確信した。
何なの……これは……。
本棚に入っていたのは年代も言語もバラバラな、夥しい量の本だった。
アリスが好んで読んでいた物語に飽き足らず、地方の伝承や神話、伝記、研究書、魔法書、図鑑など実に多種多様な本が収められている。
そのうちタイトルを見て、まだ読めそうに思えた適当な一冊を開き、愕然とする。
全然……わからないわ……。
そこに記されていた内容はとんでもなく難解で、文字は読めるが書いてある内容はまるでわからないという代物だった。
しかもあろうことに、そこにはびっしりと書き込みがされていて、何者かが熱心に読みこんだ跡が見られた。
これを誰が読んだかなんて……考えるまでもないわね……。
そして追加で数冊を取り出してみても――その中にはアリスにとって未知の言語のものも混じっていたが――どれも同じように熟読と研鑽の証に満ちていた。
「つまり……」
アリスは呟き、本棚を見上げた。
「これを全部読んだってこと……? あの子が……?」
アリスは呆然と立ち尽くした。
何も考えられなくなり、無意識に目線を机に移すと、そこには特に分厚い本が置かれていた。
最近読んでいたものなのだろうか。
アリスは重い身体を引きずるようにそちらへと移動し、ページを開いた。
「本……じゃないわね。日記……? いえ、違う……」
そこにはこの三年間で、ありすが行ってきたことが、びっしりと書かれていた。
最初は単なる日記だと思ったが、
これはきっと、アリスがいつか戻ってくるであろうことを見越し、そのときに困らないように、ありすが記録してくれていたものなのだろうということが伝わってきた。
それを一枚、一枚と捲って読んでいくうちに、アリスはこれからどうしたいのか、どうすべきなのか――自然と心づもりは固まっていった。
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