第6話 魅惑の剣舞

普段は教会の広場も数えるほどの人数だ。

しかし今日に限っては全く逆で、

観衆は今か今かと主役を待ち望んでいる。



「あそこにいる銀髪の女の子!

 かわいいな~」



「ばか!レガード家のクリス様だよ!

 隣にいるのが妹のアリス様だ!」



小等部で付き合いのある連中以外にも、

レガードの兄妹を知る者は多い。

ゲイルが騎士団の幹部だからこそ、

その息子と娘にも注目が集まるのだ。

だが今日は人気者の王女2人が教会にいる為、

何事かと市民総出で集まっている。

そしてその大勢の観客を前に、教会の鑑定士が現れた。



「それではこれより、

 スキル鑑定の儀式を始める!」



いよいよ始まる……

儀式でスキルのレベルも鑑定される。

レベルが高ければ多くの呪文や技を使うことができる。

近年最高の鑑定結果は目の前にいる、

第二王女にして聖女のマリアだ。

マリアのスキルは回復魔法レベル5。

この年齢でレベル5は異常な数値である。

シャルロットの剣術レベル3ですら、

国内でも屈指の実力でありレアだ。



そして問題はスキルが鑑定されない場合だ。

無能力者と呼ばれ差別される。

それだけにこの世界はスキルによる恩恵が大きく、スキルを持たない者は生きていくことさえも難しい。




「では、私から参ります……」



アリスの儀式が始まると、

眩しいほどに光が輝き、

会場にいる誰しもが結果を待ち望んだ。



「これは素晴らしい!!!剣術レベル3だ!

 更にダブルスキルの持ち主だ。

 雷の魔法も発現している」



何と滅多に出ないダブルスキル取得だった。

スキルが二つ発現するのはレアで、

我が妹ながら素晴らしい才能に嫉妬する。



「間違いなく女神に愛された存在……

 将来は必ず約束されているだろう」



ざわめきが収まらない。

まさか観客もダブルが出るとは思わず、

至る所で歓声が聞こえていた。



「素晴らしい才能だ!

 その才能に驕らず精進するのだぞ」



「はい……

 仰せのままに」




そしてスキル発現後は、

剣舞を披露するのが通例だ。

鑑定後の剣舞は教会側が演出をする。

教会の魔道士が神秘的な青い光を発生させ、

これからの旅立ちに向けて花を添えるのだ。



アリスが剣を持ち舞い始めると、

今までと別人のように可憐で美しく感じる。

剣術スキルが発現して更に動きにキレが増していた。


気付けば、ため息を吐くことさえも許されず、

会場内は静寂に包まれている。

その張り詰めた空間をアリスが支配して、

観客は魅せられていた。

間違いなく今日の主役となったのだ。



そして素晴らしい剣舞が終わりを迎えると、

会場から途轍もない音の拍手が鳴り響く。

感動して涙する者さえも出ていた。

アリスの容姿は抜群に良いためファンも出来ただろう。



「それでは次の者、前へ!

 次の者どこにいる?」



いよいよだ……

この素晴らしい剣舞を見た後はやりづらい。

そういえば転生する際に、女神がチートスキルを与えると言っていたのを思い出す。

その言葉を信じて俺は前へ歩き出した。




「俺です!クリス・レガードです」




そう、俺の物語はここから始まるのだ……

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