第二話 晴れの日

ピッ、ピッ、という規則的な電子音が聞こえてくる。

目を開くと、まぶしい光がぼくの目を襲った。

あまりのまぶしさに思わず目を閉じたその時、何かが光を遮った。

女の子だ……。誰なんだ……。

知らない顔が急に目の前に現れてぼくは硬直した。

「おはよう」

女の子が放ったそのたった四文字にぼくは不思議と心地よさを覚えた。

 

───君は誰?

 

ぼくの問いかけに彼女は少しだけ考えてから答えた。

「ぼくはあめ。きみにとってすごく大切な存在、かな」

 

あめは、明るい晴れやかな笑顔で言った。

大切な存在。と。

しかし、僕にそんな大切な人がいた記憶はない。

そもそも僕自身の記憶が全くないのだと、その時初めて気が付いた。

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