第16話 夜空と花火
たくさんの屋台、賑わう大勢の人、綺麗な浴衣のお姉さん、りんご飴を頬張る子供とお父さん…ひとりぼっちの私。私が立ち止まったせいでみんなが気付かずに先へ進んでしまったみたいだ。
「うーん…。あ、そうだRINEなら…」
そう思ってスマホを取り出した。
「ごめん、はぐれちゃったみたいだから花火が終わったら神社の前で合流しよう…と。」
下手にお互いがお互いを探すのはかえって良くない。それに3人が楽しんでるのならそれでいいや。美姫にRINEは送ったし、私は1人でどこか座れる場所で休んでよう…。
「とりあえずあっちに行けば…この人混みから逃れられるかな…。」
静かな場所に行きたいと思い、屋台が並ぶ長い長い参道から外れたやや上り坂になっている細道を辿った。
「こんな所に…」
歩いた先には小さな
「座れるしちょうどいいや…。ここ実は花火の特等席なんじゃない?」
偶然見つけた、隠された花火スポットに1人で盛り上がる。
「…今頃みんなはたこ焼き食べてるのかなぁ…。」
RINEを開いても美姫からの返信は無い。
「……やっぱ私の事なんて気にしてないのかな…。」
必ず誰かがそばにいないとダメな人もいるが、私は1人でご飯を食べたり出かけたりするのも平気なタイプだ。けど、今は何故か…凄く凄く…不安になっている。
「…。」
みんなどこにいるのだろう…。私の事、探してくれているのだろうか…。美姫、晶…
「…日向。」
「なあに?」
背中から聞こえた返事に驚き振り返る。
「ひ…なた?」
そこには君がいた。
「探したよ〜。迷子になっちゃったの?」
「…迷子じゃないし。」
「…あ、迷い人か。」
「は、徘徊もしてない!」
日向が私を煽る。
「それに…美姫に連絡したもん。」
「あれ?そうなの?美姫は特に連絡来たとか言ってなかったんだけどなぁ。」
日向は頭を掻きながら答えた。
「まあ会えたから良かったよ!それにしてもこんな所に東屋があったなんてね〜」
「そうなの!私も知らなかった…。」
いつの間にか日向は私の隣に腰掛けていた。
「美姫はもしかしたら通知切ってるかもしれないから、晶に連絡した方が確実かもね。」
「あ、なるほど…そしたら私、晶にRINEするね…。」
「あ、いや、待って。」
私がスマホを取り出すと日向が私のスマホの上に手を乗せた。
「花火…終わってからでもいいんじゃない?」
「……え?」
「あーいや…ここ花火良く見えそうだし、なんか勿体ないじゃん?他の2人には申し訳ないけど…せっかくだし一緒にここで見ようよ、花火。」
「あ……。や、やっぱそうだよね!私も絶対ここよく見えると思ったんだ…。」
一瞬期待してしまった自分に傷をえぐられる。私と2人きりになりたいとか考えてくれたのかな…なんて。そんな事思っても叶うはずがないのだ。そんなの…もうとっくにわかっていた。
けど…今だけ、今だけでも…
君の隣は、私でもいいかな?
「ひ、日向…!」
「うん…?」
全部伝えたら…こんな私でも、君と一緒になれるのかな?
「あ、あのね…?」
''君の特別な人になりたい''
「わ、わたし…実は…は」
―――ドドォーーン… パチパチパチ…
私の言葉を遮るかのように夜空が照らされた。
「あ、花火始まったよ!」
日向は興奮気味に言い、笑みを浮かべながら花火に目を向けた。
その横顔が…とても綺麗だと思った。
「綺麗…。」
「ね!花火!綺麗だね!」
私が呟くと隣にいた彼はキラキラした目でそう返した。
暗い夜空を、いくつもの花火が明るく照らし続けてゆく…。
「…花火みたい…。」
「え?!花火もう見てるじゃん??」
夜空のように暗い私の近くで輝き、その眩しさで私の表情をも明るくしてくれる…まるで君は…暗い夜空に咲く花火みたいだ。
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