第14話 三度目の正直よりも前に
「明日から夏休みですがー、各自羽目を外しすぎないようにねー...」
7月も半ば、明日から夏休みが始まる。
「では最後に...通知表と期末テストの結果を返したいと思いまーす。」
先生の締めの挨拶でクラスからは様々な反応が飛び交った。
「名前の順で返すから順番に来てねー...。あ、ちなみに前にも伝えた通り、期末テストで赤点の教科がある人は補習があるから必ず来てくださいね〜。」
何人かの生徒が机に突っ伏した音がした。自分の思い通りにいかないのもこれまた人生である。
「みんな赤点あった?」
「赤点はなかったよ!けど大体平均かな〜。」
各クラスの終礼後、私たち4人はテストの話で盛り上がっていた。
「今回こそ俺、美姫に勝てた気がする!俺は37位!美姫は?!」
「ふっふーん!残念!あたしは学年5位でーす!」
「カーッ!強すぎる!!」
美姫と晶は毎度のテストで競っているらしい。晶も成績は良い方だが、美姫は私たちの想像以上に好成績みたいだ。
「81位の僕、低みの見物。」
2人の成績を聞いた日向が棒読みになる。
「けど真ん中くらいじゃん!赤点とるよりは全然いいよ!」
「ま!あたし達には及ばないけどね!...春はどうだった?」
美姫が私に聞くと他の2人も私の方へ視線を送る。
「.....。赤点はなかったよ!」
「...順位は?」
「.....ひゃ...168位...。」
「...。春...下に12人しかいないじゃない...。もう少し頑張ろうね...。」
「ま、まあでも春ちゃん!赤点なくて良かったね!!夏休み遊べるじゃん!」
「うん...!何とかなった!」
実は私は...勉強が得意では無い。普段こんなに悪い訳では無いが、最近集中力が特に酷く...今までで1番酷い結果だった。
「通知表は大丈夫だったの?」
「うん!授業態度は悪くないし、前回のテストはここまで酷くなかったから!...けど心配はされちゃったかな...。」
「まあ確かに、春は1年の頃も真面目だったし...テストの順位も日向とそこまで変わらなかった気がする。」
「ちょっと最近、勉強さぼっちゃって...」
私の調子が悪い理由は3人にだけは知られたくなかったので苦し紛れの言い訳をした。だが半分本当ではある。
「全員赤点回避できたということだし!来週のお祭りに俺たちで行かない?」
「いいね!お祭り!浴衣着て行っちゃおうかな〜!」
1週間後に駅の近くにある神社で夏祭りがあるらしい。話を聞くと去年は4人では行かなかったとの事。まだそこまで私たちは仲良くなかったのであろうか...。
「春も浴衣着てこ!」
「私...浴衣持ってなくて...。」
「そしたらあたしの貸すよ!おじいちゃんの喫茶店の前で夕方4時に待ち合わせできる?」
「いいの?...ありがとう!うん、4時に行くね。」
「じゃあ日向は俺と待ち合わせね!...やっぱり前日に日向の家、泊まり行っていい?」
「うん?僕は全然構わないよ!母さんも喜ぶと思う!」
じゃあ当日は17時半に神社で待ち合わせね!とみんなで約束しお別れした。
「お祭り...楽しみだなぁ...。」
中学の夏休みは部活以外の予定が1つもなく、大変退屈な長期休みだったなと過去を振り返る。今の私は中学の私とは違い、忙しい夏休みを送れそうな気がする。...送れるといいな。
「.....。勉強もしないとな。これ以上成績落ちたら...」
洒落にならない。
学生のうちに沢山遊んどけ、だが勉強は怠るな。と仰っていたバイト先の先輩のお言葉を思い出す。その方は続けてこう言ってた気がする。
「...じゃないと、俺みたいになるぞ。」
その方は三浪していた。
「三度目の正直ならず、二度あることは三度あるになってしまったんですね!」
自虐からの美姫の追い討ちでその方は泣きそうな顔をしていたと思う。...私こそは。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます