第6話 5月6日
「春ちゃん春ちゃん。」
ある日の授業と授業の合間の10分休憩、1人でのんびりしてると晶と美姫が私に手招きした。2人だけで私の元へ来た事を不思議に思いながら2人の元へ歩み寄った。
「2人だけ?どうしたの?」
「5月6日、つまりもうすぐ日向の誕生日だから3人でプレゼントを用意しようと思ってさ。」
「去年はお金がなくてちゃんとしたプレゼント渡せなかったからね〜。」
「そうそう!うまか棒を歳の分渡したよね!」
晶と美姫が去年の事まで分かりやすく説明してくれた。うまか棒を16本…。
「けど日向は優しいから凄く嬉しいって喜んでくれて全部食べてたよね!」
「さすがに食べ切れないかも〜って言いつつ食べてくれるところが本当に優しいよね!」
みんな日向の事が余程好きみたいだ。
「だから今日の放課後、あたしが日向にバイト手伝って欲しいって頼んであるから、春には晶と一緒にプレゼント買いに行って欲しいの!」
美姫が言うこのバイトというのは美姫のおじいさんが経営している喫茶店の事だ。
記憶を無くす前、私と美姫は一緒にそこの喫茶店でバイトをしていたらしい。今は店主である美姫のおじいさんが記憶喪失の事を配慮してくださって、私と美姫は休業という形になっているそう。美姫は時々お小遣い稼ぎと言いバイトをしているみたいだ。
「うん、分かった。」
私は晶とショッピングモールへ行く約束をし授業が始まる前に席へ戻った。
5月6日、昼休み。
私達4人はお昼ご飯を持って中庭へ足を運んだ。女子2人はベンチ、男子2人は地面に座り、楽しく談笑しながらご飯を食べた。
全員のお弁当が空になったのを確認した晶がポケットからクラッカーを取り出し
「日向!誕生日おめでとう!!」
『 パァーン』とクラッカーを鳴らした。
「日向おめでとう!」
「おめでとう。」
美姫と私も次々にお祝いの言葉をかけた。
「……あ、今日僕誕生日か!完全に忘れてたよ!ありがとう!」
目を瞬かせた日向が嬉しそうに笑った。
「春ちゃん。」
晶が私に声をかける。
「うん。」
私は返事をしてトートバッグに隠してたプレゼントを取り出し、日向に差し出した。
「3人からのプレゼントだよ。」
「え〜ありがとう!中身はなになに?」
日向は開けていい?と私たちに確認しプレゼントを開けた。
「うおーめちゃくちゃかっこいいスニーカー!!本当にありがとう!毎日履く!肌身離さず持ってる!」
日向は興奮しながらスニーカーを頬ずりした。
「…そーれーとー?じゃーん!こちらもプレゼントでーす!」
日向の隣に座っていた晶が両手いっぱいのうまか棒を見せた。
「あっはまじかよ!凄く嬉しい!けどさすがに食べきれないかな〜。」
日向の予想通りの反応に私は吹き出してしまった。美姫は17本に増えたうまか棒と日向の写真を撮ってイースタグラムに載せるんだ〜と楽しそうにしている。晶は俺も写真撮る〜と日向にスマホを向け笑っていた。
3人で考えたサプライズ、成功して良かったなぁ。
そして結局日向はうまか棒を全部食べていた。
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