第5話 また明日

「では解散!」

 先生の言葉を合図にそれぞれが目的の為に動き出す。ギターケースを背負って教室を出ていく人、スポーツウェアに着替える人、これからバイト〜だるい〜と嘆く人…私はと言うと

「春ー!帰ろ!」

 教室のドアから顔を覗かせている3人の元へ駆け寄った。


「ねぇねぇ!ゲーセン寄ってかない?!新しいプリ機が出たから撮りたい〜」

「可愛い女子だけでどうぞ。」

「日向も晶も可愛いじゃん!」

「あらよく分かってるじゃない♡みんなで撮るわよ♡」

 美姫と日向の茶番は日常茶飯事のようだ。私と晶は2人の後ろで思わず笑ってしまった。私達の反応を見てか前の2人も満足そうにしている。

 どんなポーズにしよう、変顔もやっちゃう?と4人で話しながら目的のゲームセンターへと辿り着く。

「プリ撮ったらイースタグラムに載せていい?」

「事務所通してから…」

 プリ機の前でも相変わらず2人の茶番は繰り広げられていた。

「春との思い出が少しでも形として残るように…」

 優しい美姫の言葉を私は聞き逃さなかった。



 4人で過ごした放課後は本当に楽しく、気づけば辺りも暗くなり始めていた。美姫と日向は家が近いらしく2人で帰り、私と晶はそれぞれの家路へ向かう。

『 また明日。』

 3人が私に向かって笑いかける。

「うん…また明日。」

 私も笑顔を返した。


 3人がいない帰り道はとても静かに感じた。静かで……寂しい。1人が好きなはずの私が寂しさを感じるなんて少し戸惑ってしまう。

 スマホに保存された4人で撮ったプリクラを眺める。「ここは僕らが奢るよ。」とドヤ顔を見せた日向と「僕…ら?」と聞き返す晶の事を思い出して笑みがこぼれた。

「また……忘れちゃうのかな…。」

 楽しい思い出が増えるのと比例するように不安が大きくなる。

「また…明日…。今日と同じ明日が来ればいいな…。」


 今日の事…忘れないで欲しい。

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