第3話 ゆっくりでもいいけど

 どうやら私には日向の他にも友達がいたらしい。アイラインが引き立つような切れ長で大きな目が美しく、レモンの香りがするゆるふわカールの女の子の美姫。日向に劣らず笑った顔が眩しくて、少しタレ目で優しさと大人っぽい雰囲気がある男の子の晶。

「まあ記憶がなかろうといつメンはいつメンだからさ!今まで通り…な!早く思い出して欲しい気持ちももちろんあるけど…ゆっくりでいいと思うんだ。」

 晶が私を気遣ってか優しく言葉をかける。

「朝礼が始まるから早く教室行こ!春はあたしの隣の教室の2組だから途中まで一緒に行くよ!晶と日向、またお昼にね!」

「お昼…クラスの子じゃなくてこの4人で食べてるの?」

「…そう!あたし達が春の事迎えに行くから教室で待っててね!」

 美姫はそう言うと私の腕を引っ張り男子2人にもう片方の手を振りながら教室へ向かった。


 周りにはこんな魅力的な友達がいるのに、名前どころか顔も忘れてしまうなんて…でも大丈夫、絶対、思い出す。


ゆっくりでもいいけど、早く思い出してね。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る