第1話 きっと理解とは違うもの

「きみはだれ?」

 そう目の前のに話しかける。

 ぼく?ぼくはね~きみの味方

「ぼくのみかた?」

 そうそうきみの味方

「ヒーローってこと?」

 そういうと?は少しこまったようにしている。

 う~ん...ヒーローとは少し違うな~

「じゃあ、だれ?」

 ぼくは~きみの味方で□□だよ~








 この学校の図書室は割と広く、有名な漫画からよくわからない論文までおいてある。そんな、図書室に僕は来ていた。


 理由?そんなのは簡単だ、僕が図書委員になったからだ。約5日前に委員会取り決めがあり、大体の生徒は目新しい委員会へと入った生徒と委員会には入らず無所属の生徒で別れた。それで余った委員会の内、図書委員が僕に回ってきた為こうして僕が図書委員をやっている。昼休みに図書室で貸し借りの当番をして過ごす、今日を含めて当番は3回目だけど人が来ないため業務が業務じゃなくなっている。人が来なかった場合は本を読んでていいと言われているため適当にそこら辺の論文を手に取った。


[感情はどこから来るのか]

 感情は偏桃体へんとうたいと呼ばれる脳の一部から生まれてると考えられており、その理由は記憶を司る海馬に近く感情が揺さぶられるとその出来事は強く記憶に残り忘れずらいため、そう考えられています。以下略...


 ざっと読んだが普通の論文だった。


 少し長かったためほぼ流し読みだ、でもなんで感情についての論文なんか手に取ったのか、わからなかった。


 僕は感情に理解を求めているのか?


「あの、これ借りたいのですが」


 そう思考していた中、声を掛けられ僕は意識を現在に戻す。そして図書委員としての業務に戻る


「わかりました、ではこちらに…」


「あれっ?風鈴かぜすずくん?」


 いきなり、見覚えのない女子生徒から名字を言われ、改めてその人物の顔を見る。食い気味に名前を呼ばれたためか僕の言葉は遮られてしまっていた。


 そして、その女子生徒はジロジロと僕の顔を見て何か確信したかのように言う。


「やっぱり!!風鈴双葉かぜすず ふたばくんだ!!」


 僕はその女子生徒を改めてみた。


 ………やっぱりわからない


 服装やシューズなどからかろうじて同じ学年だということには気付いた。しかし、わかったのは同じ学年というだけでクラスまでは分からない。僕のクラスは僕以外、図書委員はいない。それに僕はクラスメイトとあまり話さない。だからこの生徒が一方的に僕のことを知っていても僕はこの生徒を認知してない。


「誰?」


「え⁉私だよ⁉自己紹介の時いたよね⁉」


 その女子生徒はありえないと言わんばかりに驚いていた。


「ほ、本当にわからないの...?」


「わからない」


 そうはっきりと言葉にする。するとその女子生徒は少しだけ溜息をし、自信満々に自己紹介を始める。


「私は朱頂蘭香しゅちょう らんかじゃあこれからよろしくね」


 まるで何かを誘ううように言うが少し大きいため注意をする。


「図書室では静かにお願いします朱頂さん」


「別に私たち二人だけだからいじゃない」


 すぐにそう言い返されてしまった、あくまで図書委員だから注意しただけのためこれ以上言う必要はないだろう。


「そういえば、昼休みや放課後にすぐ教室からいなくなるのは図書室にいるからなんだね」


 そう問いかけてくる彼女は少しニヤリとした表情を見せた気がした。


「じゃあ、私...」


 と言いかけたあたりで、最終下校時刻を知らせるチャイムが鳴り響き彼女の言ったかき消されてしまい何を言ったのかわからない。しかし彼女が何を言っていようが僕には関係のないことなのだから。


 彼女について理解する必要はない、なのだから




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