第39話 友達 ②

目が覚めたときに、ラノベに良くあるように、


『知らない天井だぁ?ここは何処?』


と、本気で思った。

後から説明されたのだが、脳の損傷が激しいので記憶障害が起きるだろうと言われた。

ドクターヘリで運ばれた救急病院では助からないとも言われたらしい。


確かに、見舞いの家族や友人と会っても、


『へ〜、そうなんだ〜?』


としか思えなかった。


親友の、篠原優希と、誘拐された妹の紗良が見舞いに来て泣きながら感謝されても自分としては全く実感がわかなかった。

本気で覚えてなかったし。


まあ、上半身の損傷が酷くて痛み止めの点滴のせいで半分以上意識が無かったような状態だったからね。

顔は潰されて、まだ包帯が巻かれたままだったし。


ここで一番問題になったのが、僕が絶対に忘れてはいけない存在を覚えていなかったことだった。


それは、僕の許嫁の、『渡会歩夢わたらいあゆむ』。


彼女の存在が、僕の記憶の中に残っていなかったんだ。

そのことで一番ショックを受けたのは、当然に歩夢だった。

無事ではなかったとはいえ、意識を取り戻した許嫁である僕が自分の存在そのものを記憶から失ってしまったのだから。


更に悪いことに、上半身の包帯が取れたときに僕の顔は整形が必要なほどに潰れて歪んでいたのだけれど、それを見た歩夢はショックだったのか泣き叫んで失神してしまった。

自分としては、記憶障害のせいで元の容姿は覚えていなかったし何も思わなかったんだけど。


下半身は比較的早く回復したので、リハビリで室内を動き回るようになっても、僕は歩夢の事は思い出せなかった。


篠原家当主である優希の父から、


『紗良を救ってくれて感謝する。元通りにするための費用は惜しまないから安心してほしい。』


と言われたものの、実感がわかなかった。


考えること全てが、薄く靄がかかっているような気がしてたから。


一番困ったのは、僕が『一人ではいられなくなった』事。

短時間でも、一人になるとパニック状態になったんた。

夜中に目覚めて、誰もいないと泣き叫んだりしていた。

脳の損傷の後遺症だと言われて、少しずつ良くなるだろうとの診断だったがそれには僕は一番困惑した。


少しずつ、少しずつ落ち着いてきてから、僕は歩夢と話し合うことにした。

許嫁として覚えていないことを詫びながら、もう一度友達として接するところから始めさせてほしいと伝えて。

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