第31話 個人情報
午前7時半。
駅の改札口前。
今日も、早く、来てしまった。
待ち合わせの約束は、8時半。
私、一体、何をしてるんだろうか?
昨日の夕方遅い時間に、急に祖父に学長室に呼ばれた。
本当に、突然だった。
真成との、渡会君との進展を聞かれたのだが、何故このタイミングなのかがわからなかった。
祖父曰く、
『渡会君の事、今でも本気なら急いだほうが良いぞ。
個人情報が絡むからの、詳しく教えられないが。
本来ならば、こうして伝えるのも憚られるのだからの。』
お祖父様にしては、珍しくはっきりとしない物言いだった。むしろ、何故か、私の不安を煽るような言い方なのかな?
嫌な予感に引かれるように、足を運んだ待ち合わせ場所の改札口前。
お祖父様、何を知っているのですか?
私に、何を伝えたかったのですか?
考えられるのは、『許嫁』か『親友妹』との進展か?
でも、大学外の情報をお祖父様が持っているとは思えないし。
悪い事ばかりが頭の中でグルグルと廻ります。
そうこうしている内に、通知音に気が付いた。
画面には、『真成』の表示。
嫌な予感は当たるもので、待ち合わせキャンセルのお願いだった。
『お知らせ』ではなく、『お願い』なのが彼らしい。
そして、履修登録後の『話し合い』のお願い。
お付き合いの返事だろうか?
まあ、講義室で会えるのだから、今は気にしても仕方がないのかな?
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※
「!真成!おはよー!」
早朝の不安を打ち消すかのように、わざと明るく呼びかける。
通学途中に捕まえて、もう、定位置になったかのような彼の左手に掴まります。
「ん、友香、おはよー?」
あまり元気無いな?
「元気無いな!どうしたの?」
「う〜ん、昨夜から今朝にかけて色々あってね。」
「相談、乗るよ?私に話せることならね?」
「うん、友香にも関係あるから、ラインで知らせたとおりに今日の履修登録終わったら話すね?」
はい、私にとって、悪い話で確定だね?
昨日、別れたあとに、何か、有ったんだね。
昨日、もっと、強引に、迫っておけば良かった。
多分、『お付き合い』お断りの返事で間違いないだろうから、ここから、今から逆転する方法を全力で考えないと。
でも、情報が無さ過ぎるんだよね。
時間も、余裕も、全く無いし!
真成は、今朝、私と待ち合わせ出来ない理由が、したくない理由が有ったのよね?
お祖父様が、もっと、詳しく教えてくれていれば。
考えるのよ、友香!さあ、急いで!
お祖父様が手に入れられる情報で私に伝えられない物って何なのか。
お祖父様は、あの時なんて言った?
そうだわ、『個人情報』!
つまり、昨日、私と真成が別れた後に、彼の身辺で何かが変わったのよ。
大学が知ることのできる情報が関わる事で、何かが。
私と、『お付き合い』出来なくなるような、何かが。
待ち合わせ出来なくなるような、何かが!
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