第21話 友達だと

友香が立ち去った後、彼女のを受け止めきれずに一人でベンチで呆けていると、


「あれ?渡会君?」


「あれ?もしかして、杉田さん?今日は白衣ではないんですね?どうしたんですか?立ち話も何ですから、良かったら隣に座りませんか?」


目の前に、清楚な感じの白ワンピース姿の杉田さん。

今日も、お美しいですね?

友香と別れてから誰かと話でもして気を紛らわせたかった僕は、杉田さんにその相手をしてほしくなって誘ってみたら素直に隣に腰掛けてくれました。


「アリガトウ!そうよ〜、今3限の履修登録終わった所よ。」


「えっ、杉田さん、職員ではなかったんですか?」


「あ〜、医務室はアルバイトなの!私、今年3期生なんだけと、去年の夏に急病で追試を受けたから成績が少し足らなくて奨学金半分しか下りなくなって。

救済措置で学内でアルバイトさせて貰えるから働いてるのよ。

働くのは講義の無い空き時間だけなんだけど、バイト代の他に奨学金残り相当額支給されるんだ。」


へ〜、そんな粋な計らいが有るんだ。

でも、そうしないと成績優秀者で援助を必要としている者が少しの不備で退学や除籍になりかねないから合理的なのかな?


「そうなんですね?少し安心しました。」


「あれ、どうしてかな?」


「だって、学生と職員がライン交換して親しくなって良いのかなって思ってましたから。いくら学長から杉田さんに『彼に目をかけてやってくれるかね?」』とお話があっても不味いかなと。」


「あら、嬉しいわね。親しくなってくれるんだ?良かったら、医務室に遊びに来てくれる?サービスするわよ?」


「あれ?僕は杉田さんと、もう友達だと思ってましたけど?そう思っていたのは僕だけなんですか?勿論、喜んでお伺いしますね!サービスって何ですか?」


「っ!渡会君?貴方、天然って言われない?」


「杉田さんも、そう思うんですか?昨日、友香にも言われてしまいました。」


「そういうところが、『天然』なのよ!」


杉田さん、立ち上がってから大声で叫んで走り去ってしまいました。どうしたんでしょうか?

急いでいたのかな?

引き止めたら、悪かったのかな?



※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※



『良かったら隣に座りませんか?』


今日の履修登録が終わって医務室への近道で中央広場を歩いていると、渡会君と藤原さんがちょうど別れた所だった。

遠目に見ても藤原さんは悲しそうな感じだったので、渡会君に話しかけるのはためらわれたのだけれど暫く様子を見てから、意を決して近付いて話し掛けてみたら、一緒に座るように誘われて………


『あれ?僕は杉田さんと、もう友達だと思ってましたけど?そう思っていたのは僕だけなんですか?』


とんでもない事を言い出した彼。

『天然』そのものです!

もし、計算してやっているとしたら、それこそ、とんでもない女たらしです!


『サービスって何ですか?』


恥ずかしくなって、捨て台詞を残して立ち去るというトンデモナイことを私もしてしまいました。


後で冷静になってから、ラインで、思い切って、


『先程は急に立ち去って御免なさい。また、医務室に来てください。そして、よかったら、私にも「お姫様抱っこ」して下さい!』


と送ってみたら、すかさずOKのスタンプが来たのです!

そして、同時に、


『友達なら、「お姫様抱っこ」OKですよ。

そういえば、杉田さんのお名前伺ってませんでしたので、教えて下さい ♡』


本当に、彼が、これを、無意識で、無自覚で、やっているとしたら、彼は本物の女たらしです!


『恭子よ!』


私の負けですね。敵いませんね。

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