第20話 許嫁
結局、今日も、3限の履修登録が終わるまで友香は既に定位置となった僕の左手側にピッタリと貼り付いてしがみついていたのだった。
「あの〜、友香さん?そんなに僕の腕を固めないでほしいんですけど?それなりに痛いです。」
「やだ!『友香』って呼び捨てにして!それに、まだ昨日の返事、貰ってない!」
「あの〜、それって〜『お付き合い』の返事デスヨネ?」
「うん!」
「誤魔化したくないから、話すね。この後時間取れるかな?誰も居ないところが良いんだけど?」
「じゃ、コッチよ!」
引きずられるように、連れて行かれたのは、構内中央広場の池のほとりのベンチ。
余り人の寄り付かない場所のようです。
「それで、お返事は?」
並んで腰掛けて、答えます。
「その前に、実は、僕には許嫁がいて…………」
「やっぱり!
「…………驚かないんだ?」
「そりゃぁ、昨日の話を聞けば、誰でも判ると思うわよ?
でも、『彼女いない歴年齢』って言ってたのは何故かな?」
「実際、彼女じゃ無いし、付き合ってる男女がする様な事は全く無かったしね。
中学生までは、一緒にお風呂入ったり幼馴染達と一緒にお医者さんごっこなんかもしてそれなりにエッチィ事もしてたけどさ。
許嫁の件は、お互いの祖父同士が勝手に決めた事で、彼女が来年高校卒業したら婚約解消してあげようと思ってる。そろそろ自由にしてあげないとね?
三年前から同居するようになったんだけど、その頃からどうも僕は毛嫌いされているからさ?」
「義妹さんと、キチンと話し合った事はあるの?」
「普段は普通に接してくれるんだけど、
「そう?」
「だから、義妹を解放してあげるまでは『お付き合い』出来ないんだ。」
「真成、真面目すぎるよ?もっと、気楽に『お付き合い』してほしいな?私は、真成ならセフレでもいいよ?その代わり、婚約解消したら真成の1番にしてほしいな?」
「ん、少し考えさせてくれる?」
「……………わかったわ、今日はここまでにしてあげる!近いうちに返事頂戴ね。それと、明日も今日と同じ時間に駅で待ち合わせだからね!」
「ん、わかった。けど、余り早く来ないで時間通りに来てね?あと、派手に手を振るのは辞めようね!」
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私にしては、頑張ったほうだと思う。
『セフレでもいいよ?』なんて、心にも無い事を伝えるなんてはしたない事までして。
それにしても、ここまでして迫っても手を出してこないなんて!
真成って、もしかして童貞?
予想通りだった。真成は、義妹さんが大好きなんだ。
義妹さんも、多分、突然大好きな許嫁の真成と同居になってどう接すれば良いのかわからないだけなんだろうな。
それでも、三年間も拗らせて捻くれて接するのはどうかと思うけど?
それにしても、中学生まで一緒にお風呂とはね?
幼馴染達も、真成の気を引こうとして体を張って頑張ったんだろうな?
真成に普通に接してたんじゃぁ、気が付いてもらえなくて駄目だって判ったのは大収穫かもね?
あ〜、兎に角、仕切り直しだね?
明日からはどう攻めるのが正解かわからなくなったから、どうしようか?
私、何があっても、真成の『1番』になるんだからね!明日こそ勝負しないとね?
義妹なんかには、許嫁なんかには、幼馴染なんかには負けないんだから!
一番近くにいる私の方が有利なんだからね!
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