第12話 面談?

午後7時、待ち合わせ場所にひと足早く着いた私は、渡会さんの名前で用意された席に案内されて、少し薄暗い照明で雰囲気の良い店内で緊張しながら待っていた。

私なんかが、今日一番の話題の主だった彼と食事だなんて………


勿論、彼に一切無いのはわかっているけれど。


時間ピッタリに現れた彼は、私の姿を見ても何事もなかったように話しかけてくれた。

普通なら、ルームシェア募集の相手に異性が現れたなら直ぐに拒絶するか、いやらしくセクハラ紛いの振舞いをして話はおしまいだろうに。

今朝の現場に居合わせた事もあり、私は彼がやましい気持ちを持っていないことが確信できていたので、軽く挨拶してから落ち着いて対応できた。


気さくに話しかけてくれた彼は、私に食べられない物を確認した後、ウェイターにお薦めのメニューをと格好良く?注文してくれた。



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少しだけ遅れそうになった僕は、焦りながら急ぎ足で待ち合わせ場所のビストロに向かっていた。

何とか時間ピッタリに席に着けた僕は、先に来ていて挨拶の為に立ち上がったをひと目見て、『美少年だな?女性だったら、どストライクなのにな!』と思った。


「失礼、待たせたかな?」


「いえ、時間通りですので私が早く来すぎたようですから?」


「では、はじめまして、渡会といいます。」


「はじめまして、桜井です。」


「食べられない物とか苦手な物はありますか?」


「いえ、ありませんが、強いて言えば軽めのものでお願いできれば?」


「では、ここのお薦めメニューにしましょう!」


遠慮していると感じられたので、お勧めと称して人気のセットメニューを注文。


さり気なく、を観察する。

明るい色の緩めの厚手パーカーと細めのスラックスを組み合わせていて、都会ではこんなファッションか流行りなのかな〜?

少し低い声で、線が細いが中性的でモデルかな?と思える雰囲気が感じられるな〜。

何を着ても、似合いそうだな〜。


3月半ばにこちらに引っ越してから、夕食は此処を贔屓にさせてもらって週2〜3回訪れている。

最初に親友と一緒に夕食に訪れた時に、『未成年なのでお酒は駄目ですが食事だけでもできますか?』と尋ねたところ、金曜日は書き入れ時なので避けていただければ大丈夫と受け入れてもらったから。

勿論、マナーとしてソフトドリンク追加で頼んでますから!


前菜、スープ、サラダ、ワンプレートの肉とパスタと付け合せのオリジナルメニューでデザート、ドリンク込で2,000円強は、夜のお値段としては安いと思う。お酒の後の締めのメニューに、足りない分を少し付け足した僕専用のオリジナルだし!


学年と学部をお互いに確認し合った後、たわいのない世間話をしながら、の食べる様子や話し方を観察していると育ちの良さが伺われたので、パスタを食べ始めたあたりで、


「ところで、いつ引っ越して来れますか?」


と尋ねると、はフォークを咥えたままポカーンとした間抜けな表情を見せたのだった。

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