クラスの誰にも靡かない美少女と擬似カップル配信者をやっているんだが、最近彼女の様子がどうもおかしい。 美夜さん、なんでくっついてくるの? 俺たちビジネスカップルだよな? 今カメラ回ってないですよ!
第46話 陰キャと美少女が同じ班になるための作戦!
第46話 陰キャと美少女が同じ班になるための作戦!
「今日の議題は、朝も言ったとおり校外学習の班決めです」
5限が始まってすぐ、担任教師がこう告げると、教室内はにわかに騒がしくなった。
外の廊下からも声が聞こえるあたり、どのクラスも盛り上がっているらしい。
そんな中、本来であれば蚊帳の外であるはずの俺は一人、壁際でひっそりとヤキモキする。
そのわけは、教室の真ん中で、かつクラスメイトたちの中心でキラキラと星を降らすみたいに笑顔を見せる美少女、細川美夜との約束にあった。
『一緒の班になりたい、私が一緒に京都に行きたいのは山名なの』
別棟の廊下にて美夜は俺にこう言ってくれたが、普通に考えればそれは難しい。
美夜は人気者で、俺は残り物、本来なら相容れない存在だ。
一応、この現状を覆すための作戦はすでに考えてあった。
だが、その実行は悲しいかな、日陰者の俺の手には負えない。彼女一人に、お願いするほかなかった。
「うわ、これ一緒に行く人大事だよな。なぁ、誰と組むよ?」
「そ、そりゃあ? 細川さんと組めたらいいよなぁ……」
「いやいや、お前じゃ無理だっての。夢見てないで、とりあえず俺と班になろうぜ」
などと、クラスメイトたちは思い思いに四人組を作ろうとする。
俺はただただ美夜の武運を祈る。
そこへ響き渡ったのは、誰をも振り向かせる透き通った声だ。
「はいはい、みんな。ちょっと聞いて! 私、一個、提案があるの」
美夜が教室の真ん中、手をあげる。
席を立つと、くるりと一周あたりを見回した。
それだけで、まるでステージに立ったスーパーアイドルみたいに、簡単にクラス中が注目するのだから、やはり細川美夜のカリスマ性はかなりのものだ。
まさしく、カーストの最上位に君臨する女子である。
「なーに、美夜。また変なこと考えたの? 昔から微妙にずれてるよねぇ」
「はいはい、私の悪口はそこまで。それに、別に変なことは考えてないよ。しごく、まっとうな提案だよ、これは!
校外学習の班、くじ引きにしない?」
どうやら美夜に、俺の心配など最初からいらなかったらしい。
『くじ引きを提案する』という、普通なら絶対躓くだろう最初の関門をあっさりと乗り越え、
「いや、でも友達同士で回った方がみんな楽しいんじゃ……」
「なに言ってんの。ほら、まだクラス分けしたばっかじゃん? いろんな人と仲良くなるべきだと思うんだよねぇ。私も、まだ喋ったことない人いるし」
「そう言われれば、そうだけど……」
「でしょ、この案よくない? 私的にはスーパー大アリ! アリよりのアリって感じなんだけど。委員長はどう思う?」
そのまま、みんなに認めてもらうという次の関門へと突入する。
美夜が投げかけたのは、クラス委員長の少女、大内さくらだ。
彼女が立ちあがると、俺はその背の高さにいまだ驚かされる。
と言っても、彼女の身長は165センチ、172センチである俺よりは低いのだが、雰囲気があるといおうか。
バレーボール部で鍛えられていることもあるのか、佇まいが悠然としているのだ。
それに加えて、目鼻立ちのくっきりと整った端正な顔に、はきはきとした言動、長い髪を束ねたポニーテール。美夜とは別ベクトルの格好いい美人だ。
クラスにいると、一人だけ大人が混じっているかのように錯覚することもある。
そんな先生からの信頼も厚い委員長をも、
「うん、うちも賛成です。とくに異論ありません」
美夜はあっさりと陥落してしまう。
「まぁそういうのも、いいかも。普段喋らない男子とも喋ってみたかったし」「うん、女子同士でももっと仲良くなりたいしね」
これには他の女子たちも次々に納得していき、
「それって俺にもチャンスがアリよりのアリ!?」
「うおおお、細川さんとお近づきになるチャンスがきたぞっ!!」
男たちはこの盛り上がりようだ。
不純な考えをもった野郎が多すぎだろこのクラス、美夜がいえば靴ぐらい舐めそうだなぁこいつら……、とは心の中で突っ込み呆れる。
そんな中、赤松は少し不機嫌そうに貧乏ゆすりをしていたが、
「ありがと、みんな! いやぁ、くじ引き楽しみすぎかも」
美夜が全体に振りまいた、邪気のない笑顔を見ると、頬を赤く染める。そのまま足を組んで黙り込んだから、反論するつもりはなさそうだった。
……ちょろいなぁ、こいつ。
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