41話
眠っているセリーナさんを寝室に残し、居間で制服を片付けたりパーティに必要なものの準備をしていると、マリーさんが部屋に戻って来た。
「あ、おかえりなさい。」
「ただいま。お嬢様は?」
「少しお休みになられるそうです。校長先生の話が長くて眠くなってしまわれたそうで。」
「あぁ、なるほどね……。」
マリーさんも苦笑いしてるところを見ると、身に覚えでもあるのだろうか。
「ところで、パーティの準備はどう?」
マリーさんの質問に、用意しておいた小物やドレスを見せる。
ドレスはセリーナさんとも事前に相談して決めていた紫色のものを用意しているので、小物もそれに合わせて選んでみたつもり。
「うん、いいわね。お嬢様が問題ないと仰るならこれにしましょう。」
「はい!ありがとうございます。」
実はパーティの準備とかは初めてなので不安だったけど、マリーさんからOKが貰えて一安心だ。
念の為に違うものもすぐに用意出来るようにしてあるし、後はセリーナさんが起きて来たら着替えてもらえば大丈夫なはず。
「あ、そう言えば。」
ふと気になったことがあり、マリーさんに聞いてみる。
「ん?」
「今日王太子はお嬢様をエスコートしないなら、1人で参加するんでしょうか?」
「あぁ、そう言えばどうするつもりなのかしらね?」
マリーさんもそのことについては何も聞いていないようで、2人で首を傾げていると……。
「あの方は1人では参加しないはずよ。」
私の疑問に答えたのは、寝室で寝ていたはずのセリーナさんだった。
「あ、お嬢様。起きられたのですね。」
「ええ。おはよう、マリー。入学早々何処ぞのご令嬢と仲良くなったみたいでね。その方と参加するんじゃないかしら?
まぁ、どうでもいいわよ。
とりあえずお茶をお願い出来るかしら?」
「はい、かしこまりました。少々お待ちくださいませね。」
色々言いたいことはありそうながらも、一礼して部屋を出るマリーさんを見送っていると、セリーナさんがちょいちょいと手招きをしている。
「?」
なんだろうと思いながら近くまで行くと、ソファに腰を下ろしたセリーナさんの隣に座るように促される。
今は勤務時間だからあまり良くないんだけど、主の指示だから、まぁ大丈夫かな?
「ラウル様……あぁ、王太子殿下のことね。あの方はヒロインとパーティに参加するのよ。」
「え!?そうなんですか!?」
思わず大きな声を出してしまい、セリーナさんの両手で口を塞がれてしまった。
「ちょっと!マリーに聞こえちゃうでしょ!」
「すみません……。」
「入学式の後、パーティに参加しようにもパートナーのいないヒロインは参加を取り辞めようとしていた。
それを知った王太子が不憫に思い、パートナーとして一緒に参加する。そして、2人はパーティを通して親しくなり、やがて恋が……ってな流れなのよ、あのゲーム。」
「ヒロインも不憫かもですけど、そのせいで1人になる婚約者の方がはるかに不憫だと思うんですけど……。」
いくら乙女ゲームと言えどもさすがに無茶苦茶過ぎるような……。
出会ったばかりの令嬢をエスコートする為に婚約者を放置とか、例え関係が良くなくてもありえないんじゃ?
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