40話
「それじゃあ、セリーナさん……お嬢様はお1人でパーティに……?」
「婚約者がいない方は家族や親戚がエスコートするけど、公爵様や兄君に頼まれたっていうのも聞いてないからたぶん……。」
それはあまりにも寂し過ぎる。
公爵様はセリーナさんを溺愛してるし、今は王都にいない兄君も同様だと聞いている。
セリーナさんが頼めばエスコートくらい喜んでしてくれそうだと思うんだけど。
「お嬢様が王太子様の婚約者っていうのは広く知られてるからね。
ご家族に頼んだとしても良くない噂が広まるのは避けられないかなぁ。
それに、お嬢様の性格考えると、王太子様がエスコートしてくれないからってご家族に頼るとは考えにくいし。」
そもそも公爵様にその事すら伝えてないんじゃないか。
なんでセリーナさんがそんな目に合わないといけないんだ。
元々低かった王太子への好感度がどんどんマイナス方向に振り切れていくのを感じる。
「とにかく、私達に出来ることはお嬢様をどの令嬢よりも華やかで美しくすることよ。
王太子様が後悔してもしきれないくらいにね。」
マリーさんの言う通りだ。
セリーナさんの姿を見た王太子が、セリーナさんを邪険にしたことを悔やんでも悔やみきれないくらいに仕上げてみせる。
私とマリーさんは、固くそう誓い合った。
「ただいまー。」
「お嬢様、おかえりなさいませ!入学式は如何でしたか?」
今日は午前中に入学式、夕方から入学記念パーティなので、セリーナさんはお昼前には寮に帰って来た。
「特に何もなかったわよー?てか、ミリ口調が固いー。」
そのままソファに座り込もうとするところを何とか踏みとどまらせて着替えてもらう。
確かに、今は2人きりだしくだけた話し方しても問題ないとは思うけど、一応お互いの立場があるので口調に関してのご意見はスルーしておく。
「全くもう……。ところでマリーは?」
私が意図的にスルーしたことには気付いてるみたいだけど、それ以上そのことには何も言わずに部屋をきょろきょろと見渡しているセリーナさん。
「あぁ、ちょっと学校の事務局の方に行かれてます。空き部屋の管理のこととかで確認しておきたいことがあるとか。」
「あぁ、そうなのね。私は少し寝ようかしら。校長先生の長い話のせいで眠くて眠くて。」
そう言いながらも既にあくびをしている。
やはりこの世界でも校長先生の話が長いというのは変わらないみたいだ。
「そろそろお昼の時間ですけど、どうされます?」
「んー、今日はパーティもあるしパスで。準備する時間になったら起こしてー。」
そう言うやいなやベッドに潜り込むセリーナさん。すぐに寝息が聞こえ始めたことから相当眠かったようだ。
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