第37 ※ミリ視点に戻ります

遂にセリーナさんが貴族学校に行く日がやって来た。

今日が入寮日で、明日が入学式。

その後は入学記念のパーティもあるそうで、そこでのセリーナさんの身支度を調えるのが私とマリーさんの最初の大仕事だ。


「ミリも体には十分気を付けるんだよ。」


馬車の近くで控えていると、公爵様がわざわざ声をかけに来て下さった。

最初の頃はなかなかお目にかかる機会は少なかったけど、最近はことある事に声をかけて下さってありがたい限り。


「はい!ありがとうございます。精一杯お嬢様にお仕えさせていただきます。」


「昔よりはかなり良くはなりましたけど、まだまだセリーナは我儘なところがあるから。何かあれば遠慮なく連絡してらっしゃいね?」


公爵様に返事をしていると、奥様まで声をかけて下さった。

ちなみに、そのセリーナさんはまだマリーさんと準備中で出て来てはいなかったけど……。


「まぁお母様。酷いですわ。

可愛い可愛いミリを困らせるようなことなんて致しませんわよ?」


いつの間にか出て来ていたセリーナさんがぬっと顔を出した。

あ、ちょっと怒ってるなこれ。


「あらあら、セリーナいたの?」


セリーナさんが怒ってるのに絶対気付いているはずなのに、素知らぬフリをして笑っている奥様はさすがと言うか何と言うか……。


いつもにこにこと優しい笑顔を絶やさない奥様だけど、実は百戦錬磨の社交の達人だっていう話だし、只者じゃないんだろうなぁ、きっと。


「全くもう……。さ、そろそろ行きますわよ。」


主である奥様に対して不敬とも言えることを考えていると、セリーナさんがさっさと馬車に乗り込んでしまったので、私とマリーさんも急いで後に従う。

本来なら仕える主人と同じ馬車に乗ることはないけど、今日は特別。

貴族学校の寮に入る子息令嬢が大勢学校に来ることになるので、少しでも混雑を和らげる為に馬車は1台で行くからだそうだ。


「それじゃ、セリーナ。体には気を付けて頑張って来なさい。」


「あまり2人に迷惑をかけたらダメよー?」


「はい、それでは行ってまいります。」


公爵様と奥様、それに屋敷の全ての使用人達の見送りを受けて、馬車は貴族学校へと向けて出発した。

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