38話
馬車に揺られる事数十分。
王都の外れにある貴族学校は、とにかくひたすらに広大だった。
授業を受けたりする為のメインとなっている建物も大きいが、全学生が寮に入ることが義務付けられている影響から、寮となる建物の数と大きさも並ではない。
「これが寮ですか……?」
貴族学校の正門のところで待っていた案内係の職員さんに連れられ(案内係が付くのはセリーナさんのような一部の高位貴族や王族だけらしい)、寮に足を踏み入れた私の第一声はそれだった。
この建物自体が侯爵以上の高位貴族向けのものだからと言うことらしいけど、3階建てのその建物の1フロアが丸々全部セリーナさんの部屋扱いらしい。
公爵家のセリーナさんの部屋と比べても、装飾品や調度品の質では劣るものの、広さだけなら同じくらい。
併設する形で用意されている私とマリーさんの部屋もかなりの広さだった。
ちなみにセリーナさんの部屋は3階で、1階と2階は今年は空き部屋になるそうだ。
「まぁ、私も無駄だと思うんだけどね?貴族の面子とかそんな感じの理由らしいわよ。しょうもない。」
私とマリーさんしかいないから、セリーナさんはすっかり素になっている。
「ほら、ミリ。早く荷解きしちゃうわよ。お嬢様はこのままお寛ぎくださいね。」
私が寮の広さと豪華さに圧倒されている間に、茶器を用意してセリーナさんにお茶を淹れているマリーさん。
そうだった。ぼーっとしている場合じゃなかった。
「荷物そんなにないでしょー?
ほら、2人もこっちで一緒にお茶しましょ。」
テキパキと動くマリーさんの手伝いを急いでしようとしているところに、セリーナさんからのんびりとした声がかかる。
確かに馬車1台で来ているから荷物を積める量には限界があって、そこまでたくさんという訳ではないけど……。
それでも最低限すぐに必要になる服や身の回りの物など、トランクがいくつも部屋に積み重ねられてる状態なんですが……。
まぁ、公爵家のご令嬢の荷物としては少ないのは確かかもしれない。
が。
「お嬢様?何か仰いました?」
マリーさんの笑顔が笑ってない。
あ、これはやばいやつだ。
「あ、いえ……。なんでもないです大丈夫です1人でお茶飲んでます。」
セリーナさんもわかったみたいで、顔がめっちゃ引き攣っている。何故か敬語になってるし。
私は関わらないのが1番と判断して、荷解きを黙々と続ける。
たぶん、セリーナさんはしばらくマリーさんからお説教されるはずだ。
案の定始まったマリーさんのお説教をBGMに、服はクローゼット、小物は部屋にある棚にと手早く片付ける。
「ミリも大分仕事が速くなったわね。」
今度は本当の笑顔でマリーさんがそう声をかけてくれた頃には、セリーナさんの荷物はすっかり片付いていた。
セリーナさん本人は真っ白に燃え尽きてたけど。
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