第35話
王都に着いてその街並みを目にしたミリは、ここが日本ではない、別の世界だということに気が付いたみたいだった。
日本へ戻れるかどうかと言う話は、確実な事がわからないから私の方からは何も話してないけど、何となく難しいんじゃないかって言うのはミリも察していたみたい。
絶対ショック受けてるはずなのに、それを表には出すまいとして無理しているのがわかってしまって、正直見ていられないくらい辛かった。
私なんかより、ミリの方がよっぽど辛いのにね。
だから、何か力になってあげたいと思って屋敷に住んでもらうことにした。
突然連れて来て、身元もわからないミリを屋敷に置くことに、さすがのお父様も最初は難色を示した。
彼女の境遇(咄嗟の思い付きで記憶喪失の女の子ってことにしてしまった。まぁ、事後承諾でミリも了承してくれたから無問題。)には同情はするが、我が家の立場上身元のはっきりしない者を置く訳にはいかないと。
お父様の言うことも理解は出来たけど、ミリを他所にやるなんて絶対出来ないと思った。
こんな右も左もわからないところにいきなり飛ばされて、1人放り出されるなんてあまりにも辛すぎる。
かなり大変だったけど、夜を徹する説得と、たぶん初めてお父様に頭を下げてお願いしたおかげか、何とかお許しを貰えた。
条件は、ミリの行動の全責任は私が負うこと。
公爵家の令嬢である私が責任を負うというのは、何かあったら謝って済む事ではない。最悪、一族から追放されることもある。
そこまで言えば私が諦めると思ったのかもしれないけど、ミリを屋敷に住まわせる事が出来るなら、それくらい何でもなかった。
そんな訳で我が家で暮らし始めたミリだけど、私としてはずっと私のお客様、それか義妹にしてもいいかなってくらいには思ってたんだけど……。
本人がただで居候するのはどうしても嫌だって言うものだから、侍女見習いとして働くことになった。
何か困ってないか気になって、私付きの侍女のマリーに事ある事にミリの様子を聞いていたんだけど、ミリの真面目で一生懸命な性格は他の使用人達にもすぐに受け入れられたみたい。
最初は警戒してた両親も、その働きぶりを見てすぐに気に入ってくれたし。
最近は街で友達も出来たみたいで、休みの日にはよく出掛けているみたいだ。
是非私にも紹介して欲しかったんだけど、何故かマリーに反対されてしまった。
私が一緒だとミリが気を遣うからダメだって……。
ミリは私にとって可愛い妹みたいな存在なのに悲しい……。
でも、ミリが屋敷に来て、前世のことやここが乙女ゲームの世界であること。
私が悪役令嬢で、婚約者の王太子にはものすごく嫌われている事などを全部話せたのは良かった。
ずっと誰にも言えないで1人で抱えていたものを吐き出せて楽になれたし、この世界に何のために私がいるんだろう。居る意味あるのかなって思ってたけど、ミリのおかげでそれもなくなった。
例え将来、私がどうなろうとも、それまでにミリが幸せに生きていけるようにする。
その為に私は今ここにいるんだって思えることですごく救われた気持ちになれたから。
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