第6話
「それで、さっき森で貴女を見かけた時にすぐに日本人だって思ったのよ。
黒髪は珍しいし、何よりその格好。それ、制服でしょ?」
びっくりしたわーと笑うセリーナさん。
笑い上戸なのか、さっきからずっと笑っている。
「まぁ、とにかく。
当分の間はうちに居てくれて構わないから。
こっちに慣れるまでのサポートは任せて!!」
「それはすごくありがたいですけど、良いんですか?
その、ご迷惑では……。ご家族もいらっしゃるでしょうし。」
何もわからない場所に放り出されるのに比べればとてもとてもありがたい話だが、公爵家っていうくらいだから私みたいに何処の馬の骨とも知れぬ人間を置いておくと、色々とまずいのではないかと思う。
「ん?大丈夫大丈夫。そんなの全然気にしないでいいわよ。
両親は今夜は帰りが遅いだろうから、明日にでも話しておくし。
使用人のみんなにも私のお客ってのは伝わってるから問題なしよ。」
私の心配をよそに、ひらひらと手を振りながら軽く返されてしまった。
使用人の皆さんはもちろん、ご両親にも改めて挨拶しないと……。
公爵だから貴族か。きちんと話せる予感が全くしないや。
「せっかく日本人に会えたのだから、色々話したり聞かせて欲しいなぁとは思うんだけど。
今日は疲れてるでしょ?
それはまたにして、ゆっくりと晩御飯にしましょうか。」
そう言うのを待っていたかのように部屋の扉がノックされる。
セリーナさんが応えると、先程お茶を用意してくれたメイドさんだった。
「失礼致します。
お嬢様、晩餐の仕度が調いました。
お客様の分もご一緒に用意させて頂いております。」
「ええ、ありがとう。
ではミリ、行きましょうか。」
一瞬でお淑やかなお嬢様モードに切り替わり、にっこり微笑むセリーナさんに続いて歩きながら、ふとあることに気が付く。
「あ、セリーナさん。その、私テーブルマナーとか全然わからないんですけど大丈夫ですか?」
「あぁ、大丈夫よ。
公的な場ならともかく、私的な晩餐だし。
それに今夜は私と貴女だけだからね。使用人は控えてるけど。」
ひそひそとそんな会話をしながら食堂に移動し、生まれて初めて給仕付きで食べたフルコースの晩餐は、本当に、本当に美味しかった。
まぁ、テーブルマナーは酷かったと思うけど……。
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