第4話

「こちらに。」


促されるままソファに腰を降ろすと、これまたものすごくふかふか。

別世界の光景にキョロキョロしていると、扉を開けてくれたメイドさんが飲み物を持って来てくれた。

紅茶だろうか。すごくいい香り。


「あ、ありがとうございます。」


お礼を言う私ににっこり微笑んですっと壁際に下がるメイドさん。


「少し外してもらえるかしら?」


優雅な仕草で紅茶の飲みながらセリーナさんが告げると、メイドさんは一礼して部屋から出て行く。


2人きりになった部屋に、私が茶器を置く音だけが響く。

なんでセリーナさんは全く音をたてずに飲めるんだろうすごい。


「あの……。」


何となく沈黙が気不味くて声をかけると、ふぅっと1つ息を吐くセリーナさん。


「どうやら誰も聞き耳は立ててないみたいね。

ようやく一息つけるわ。」


はぁ〜〜と、とてもお上品とは言えない声を出しながら、ズルズルとソファに体を沈めていく。


「あー、ごめんね?

みんなの前ではきちんとお嬢様してないといけないからさ。」


先程までの上品なお嬢様とのギャップに、私がぽかんとしているのに構わず、セリーナさんはケラケラと笑っている。


「さて、それじゃあ約束だしきちんと話さないとね。」


「はい。」


体を起こして表情を引き締めるセリーナさんに、私も身構える。


「そうね……。うん、落ち着いて聞いて欲しいんだけど、ここは日本ではありません。そもそも私たちが暮らしていたのとは別の世界です。」


「あ……。やっぱり……。」


何となく、わかっていた。

と言うか、ここに来るまで色々と不思議だったことが納得出来たという感じ。

見える風景こそ、現代の日本と比べて時代の差を感じることはあれど、異質さはそんなに感じなかった。


でも、そこに住む人々。

セリーナさんもだし、馬に乗っていた人も御者さんも。

この屋敷の人々も見た目は全然日本人ぽくない。

なのに、話す言葉はみんな日本語だった。


たまたま日本語が堪能な人が揃っていたというよりは、日本ではない。そもそも別の世界と言われた方が納得出来た。


いや、納得出来たと言うよりは……。


「落ち着いてるわね……。」


驚くでも取り乱すでもない私に、むしろセリーナさんが驚いている。

まぁ、そりゃそうだよね。

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