3-5 朝三墓死

日時

【四月二十六日 日曜日 十二時二十一分】

場所

【某県某市住区基幹公園前】

人物

【詩刀祢】


「あんまり、大丈夫じゃない、です。」


 目の前の少年の様子を見た詩刀祢は、心の奥で安堵した。

(この様子を見るに、彼にかけられた記憶誤認は上手く機能してる。覚醒体の能力で精神抵抗が上がったりしてる可能性も考えてたけど大丈夫みたい。)


「少し座って休もうか。」


 詩刀祢と少年は小さな公園のベンチに腰掛ける。

 少年は酷く辛そうに深く項垂れていた。


「大丈夫? 水、買って来るね。」


 視線をベンチから上げた詩刀祢はその先に建設現場の現場シートが微かに見えるのを認めた。

 小さな公園にはベンチの他は撤去された遊具の跡しかない。

 自動販売機を探すために彼女は公園を出て来た道を戻る。


(彼には悪い事をしたな。)


 歩きながら彼女は後悔の表情を浮かべた。


(中園司季。彼に行われた記憶誤認は落ちてくる鉄骨に幼馴染みが押しつぶされる場面を目撃したというもの。赤の他人でもトラウマになりそうな出来事なのに幼馴染みなんて、子守里室長も酷なことをする。)


 そして、そのトラウマを真偽の見極めの為に敢えて刺激したのは彼女だった。


(声をかけられた時には本当に驚いたけど、杞憂でよかった。)

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る