第127話  第2章 ⭐決心⭐

『海人、もう一度彼女と話をしてみたら?』

陽は海人に声をかけた。

海人は暫く黙り込んだままだ。

『無理にとは言わないけど。』

陽はポツリと付け足した。



何か思い付いたように、海人は顔をあげて、陽の顔を見て言った。

『このツアーが終わったら連絡してみるよ。最後まで、きちんと伝えてみるわ!』

海人が少し笑ったので、陽は安心した。


『おっ。俺の撮影ももう少しで終わるし、このツアーが終わったら、話をしてみるよ!』

『ん?誰と?』

『んー、言葉にしなきゃ伝わらない。俺達B/というグループはもっともっと上を目指す為に走ってきたけどさ。

ファンの方も大事だけど、俺達が楽しく仕事できなければ、ファンの方に申し訳ないだろー!』


『お、ぉう、そうだな。』

一体誰と話をするのか、海人にはわからないままだった。




そのままツアーは続き、移動をする。

メンバーの啓太は1度戻って生放送の仕事をして移動してくる日もある。

とてもハードで疲れも貯まっていたのだろう。



ある日、啓太は遅れていた。

『おはようございます!』

啓太が楽屋に慌てて入ってきた。

『良かったーリハーサルには間に合いそうだ。危なかったーーー寝坊した!』

啓太の後頭部にはしっかりと寝癖がついていた。


『おーお疲れ様!眠れてるか?』

陽は声をかける。

『何とか。陽さんとこは、彼女とどんな風に連絡とってます?』


『え?急に何?彼女できた?』


その言葉に啓太は照れながらニヤニヤとする。

『そうなんですけどー、電話とかゆっくりできなくて、可愛そうで。。。。。』

きっと長電話をしてしまったのだろう。


『長くは話できないよね。俺はちょっと空いたらちょっと電話してすぐ切る!みたいにしてる。あとはラインかな。。。』


『そーか。』

『お互いに我慢だもんな。。。』

『我慢かぁ。。。』

『さて、切り替えてリハーサルすんぞ!』

『よしっ!行きますか!』

『行こう!リハーサル終わったら、ちょっと休めよ!』

『あーい!』

B/のメンバーも、色々とあった。

時にはぶつかり合い、喧嘩もしたけれど、メンバーの絆は強くなり、大切な存在になっていた。

そして、今回のツアーもスタッフさんやファンの方のおかげで何とか乗り切った。


『キャー』

『うぁーーーーー』

歓声が会場に響き渡る。

キラキラとした銀テープが舞い、みんなが上に手を伸ばす。


小さな銀テープの欠片をつかもうと。。。。

今日の思い出を残そうと。。。。。


俺達だって負けてはいられない!!

この上に伸ばされたみんなの手をもっともっと高い所へ!

もっともっと多くの人を連れて!

そして。。。。。


『またこの会場で絶対に会いましょう!』

と言ってステージを降りた。




『打ち上げだーーー!!!』

『ふぃー、今日はどこー???』

『お疲れ様です!今日はお寿司です!』

『うぁーーーーーお寿司!!!』


さすがに疲れていてもテンションが上がる。

早く自宅に帰りたかったが、大きな荷物を抱えて陽も参加する。


最近は社長も打ち上げに来てくれる。

打ち上げは最高にはしゃいで盛り上がった。

酔っ払って眠ってしまう駿。

必死で食べている啓太と洋平。

何やら携帯を弄っている海人。

陽だって負けてない!

お寿司はどんどん口に入っていく。

『ウニ下さーい!』

『どんどん食べろ!明日は久しぶりの休みだからな』


そして、陽は不意に立ち上がって、社長の所へ向かった。

『あのー、社長!お話があります!』

『お?陽、どした?酔っ払ったか?』

『いえ、コーラしか飲んでません。』

『改まって話って珍しいな。どした?』

『社長にお願いがあります!!!!!』

まっすぐな力強い目で社長を見つめた。


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