第122話  第2章 ⭐B/は人気者⭐

B/はますます忙しくなっていた。

B/の出るCMが時々テレビから流れてくる。


陽の部屋に戻った碧は、少しだけバイトをするようになっていた。

(仕事しなくてもいいよ!)と陽は言ってくれるのだが、陽がいないと時間をもて余してしまう。


ツアーで何日も家をあける時は、陽の母親や碧の母親が遊びに来てくれる。

以前のような穏やかな日々が戻ってきた。

事務所も公認になったため、ライブなどは招待して貰えるようになった。

陽の夢はどんどん大きくなっていた。


穏やかな日々とはいえ、陽は忙しくてのんびりとふたりの時間は取れない。


『ただいまー』

『お帰りなさい』

『久しぶりに早く帰ってこれたわー。寂しかったよなぁ?』

『まぁねー。でも、忙しいってありがたい事だから。』

離れていた長い月日は碧を少し強くしたようだ。



『ありがとう!碧、1つ報告があるんだ』

嬉しそうに陽は一冊の本を見せた。


『なあに?』

『俺、ドラマ決まった!』

『ドラマ?』

『そう!』

『俳優さんもやるの?』

『そう!』

『どんなドラマ??』

『それが。さ。。。』

『アクションとか?刑事とか?』

碧の目がキラキラと輝いている。

(陽の仕事が増えたんだ!私が一緒にいでも大丈夫なんだ!)


『恋愛ドラマなんだよねー』

『キュンキュンするやつ?』

『そ、キュンキュンするやつ。。。』

『あ、』

『あ?』

『もしかして、チューとかしちゃう?』

『そのもしかしてをしちゃうやつ。。。』

碧はほっぺを膨らませて怒った顔をする。

『そうだよな。嫌だよな。』

『ドラマの間は好きになったりするんでしょ!だって、女優さんとか可愛いもん!私みたいに大きな人じゃなくてさ、可愛らしい女優さん、、、』

拗ねて文句を言う碧の口を陽がキスでふさいだ。

『碧、愛してる!だから心配しないで。』

『陽カッコいいから心配するよ。だってさ……でもさ…大事なお仕事………さ、』

小さな声でぶつぶつと碧は文句を言っている。

そんな碧を見ていると可愛くて陽は笑い出した。

『なによ!』

『碧。スタッフさんがたくさんいて、セリフとかたくさん打ち合わせして、カメラが回って、みんなに見られながら作品を作るんだよ。その中のシーンの1つだよ。』

『そっか。俳優さんの奥さんとか彼女は乗り越えなければならないな!そだ!お仕事だもんな!でもな。いや、そんな事では………』

何やらブツブツと言っている碧が堪らなく愛おしいくて。

でも、碧の顔が面白くて陽は笑っている。



ヒャッハ!ハッハッ!

『なによ!真剣に考えてるのにー』

ヒャッハハハハハ!

陽は手を叩いて笑う。

『陽、ひどいよぉーー』

『ごめん。ごめん。』

『もう!わかった!見ない!いやでもなぁーー。1回で成功させてくれる?何回も撮るのかな。。。監督さん次第か。。。』

ヒャッハハハハハー!


『碧?キュンキュンするやつとは言ったけど、誰も相手は女優さんだと言ってないよ』

『へ??キュンキュンするやつでしょ?』

『そだよ!今回は俳優さんとキュンキュンするやつなんだ!』

『男の人?』

『そ。でも、この先女優さんもあるかもしれないなぁ。。。その時は、碧といっぱい練習しなきゃ』

『はらーー、男の人とキュンキュン???』


『もー碧といると楽しくて仕方ないわ!

何だかね、今流行ってるんだよ。BL。ほら、洋平も似たような奴にこの前でてだろ?』


『あ、あれね!洋平くん、可愛かったー!でもスゴいね、お仕事いっぱい増えて!』

『頑張るから、碧、離れないでね!』

『もう離れないよ!』

一緒にいても邪魔にならないってわかったし。会えないのは、もっともっと辛いから。


碧は右手の小指を顔の前に差し出した。

『指切りっ!』

陽も笑って右手の小指を絡ませた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る