第121話 第2章 ⭐懐かしい部屋⭐
『懐かしいーーー』
『うん。』
まだ、碧は心の整理が追い付いていない。
どうすればいいのかわからなかった。
『うぁー!こんなにB/が並んでる!』
『ずっと集めてたから。。。』
『体調はどう?』
『ん、時々発作が出るけど。大丈夫。』
『そっか。』
火にかけていたお湯が沸いた。
『お茶とココア、どっちがいい?』
『ココアにしよっかな。』
陽は碧の後ろ姿を見つめていた。
涙が溢れてきた。1人ぼっちでこの部屋でどんな風に生活をしてきたのか考えると辛くて切なかった。
『碧、俺達やり直そう!俺は別れたつもりはないんだけど。一緒にあの部屋に帰ろう?』
『でも。。。』
碧は、あの日の出来事を言えるはずもなく、下を向いたままだ。
そんな碧を見て、陽は続けた。
『渡辺って人が来たんだろ?小切手持って。金額決めていいから俺と別れてくれって。』
碧は黙って頷いた。
『辛かったよね、俺の力不足だった。』
碧は首を横に降る。
『私、陽の夢の邪魔になりたくなかったから。私が決めたの。。。。。』
『でも、すんげー怒ったんだろ?』
『そりゃー。。。』
『小切手をビリビリに破いて怒られましたって、聞いたよ。』
『だって。そんなのお金じゃないもん!』
碧の目に涙がまた溢れてくる。
陽は碧をもう一度、抱き締めた。
『ありがとう。もう大丈夫だよ!』
『どして?』
碧の頬は涙でびちょびちょだ。
(変わらないなぁー)と、陽は碧の顔を優しく両手で包んだ。
少し痩せてしゅっとした顔。
『ちゃんと事務所と話したから。ドームツアー終わったら、彼女とまた一緒に住みます!って宣言してきたから!』
『許して貰えたの?』
『結婚はまだ待ってくれって。待てる?』
(一緒に居れるならそれでいい。)
碧の願いはそれだけだ。
『陽と一緒にいていいの?』
『うん、碧、一緒に帰ろう!』
『ウェーーーン。。。』
碧は子供のように泣いた。
会えなかった時間、ずーっと我慢していたのだろうか。
碧の涙は止まる事なく流れた。
『おぃおぃ、碧、こっち向いて!』
『グズン。』
『明日は休みだから、ここで一緒に過ごそう!そして、少しずつ片付けてあの部屋に帰ろう!』
陽は碧の目を見つめて言った。
『ホントにいいの?』
『迎えにきたんだよ。ね、あの部屋に一緒に帰ろう!』
碧はコクりと頷いた。
『あー、良かったーーー!断られるかと思って怖かったよぉーー』
『陽、いい匂い。。。』
『ん?なんも付けてないよ?あ、ライブ終わってシャワーしてきたからかな』
『いい匂い。。。』
『クチャいのか?』
『クチャくない。いい匂い。陽の匂い。』
久しぶりのやり取りだった。
あんなに泣いていた碧が笑ってくれた。
陽はほっとしていた。
『ココア冷めちゃうね?』
『ふふっ』
『どした?』
『なんでもない。』
『なぁーにぃー?』
『王子様が迎えに来てくれたみたいだ。』
『夢はまだまだ追いかけるよー!碧と一緒にね!!!』
久しぶりのふたりのキスは甘いココアの味がした。
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